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ミステリ感想-『スノーホワイト』森川智喜

2019年08月14日 | ミステリ感想
~あらすじ~
真実を教えてくれる魔法の鏡を持つ中学生の襟音ママエは、小人のグランピー・イングラムを助手として探偵事務所を営む。
鏡の力で真相を知り、そこから推理を逆算する彼女は、一癖ある探偵・三途川理と知り合い、目の敵にされる。
そして三途川はもう一つの魔法の鏡を手にし、ママエを亡き者にしようと図る。

2014年本格ミステリ大賞


~感想~
まず「魔法の鏡があり七人の小人もいます」という突拍子もない設定が出されるが、それを受け入れないことには話が始まらない。
第一部では魔法の鏡で一足飛びに真相を手にしたママエが、いかにしてその推理を導き出したのかをひねり出す、パロディミステリとして楽しめる。謎がどうでもいいほど小粒だったり、伏線は豊富だが説得力が無かったり、読者がたどり着けそうになかったり、そもそも推理も鏡に聞けば事足りてしまったりするが、まあパロミスなら問題ない。

本領発揮は第二部のママエ VS 三途川で、この設定で考えうる限りのネタを詰め込んだ、本作ならではの頭脳戦が非常に楽しい。頭脳戦というか三途川無双でママエはほとんど何もしていないし、一部どう考えても成立していない罠もあるのだが、このアイデアの山には感心するばかりである。

麻耶雄嵩「さよなら神様」に設定はかなり近く、一方で鏡があまりにも万能すぎて、縛りが緩くちょっとなんでもありにしすぎたきらいもあるが、例によって「こまけぇこたぁいいんだよ」と受け流せば、魅力あふれる異色の本格ミステリである。


19.8.13
評価:★★★☆ 7
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