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ミステリ感想-『T島事件』詠坂雄二

2019年08月18日 | ミステリ感想
~あらすじ~
ホラー映画のロケハンのため孤島に渡った6人のスタッフ。
全員が死亡したが、残されたテープには彼等の動向が逐一記録されており、警察は既に終結した事件と断定した。
しかしプロデューサーの瓶子は、別の解釈ができるかもしれないと、名探偵・月島凪に調査を依頼する。


~感想~
退屈・苦行・つまらない・問題作と聞いていたが全然普通に読めてしまった。どんなに退屈なのだろうかと身構えて読んだものの、それにしたって別に特筆すべきほど退屈でも苦行でもない。
みんな普段どんだけ起伏に富んだ超絶面白本を読んでいるんだ…?
問題作なのは間違いないが、普通は短編か何かでやるネタを長編でやってしまったとか、シリーズ作品のもうちょっと先でやるネタをもうやったとかいう方向の問題作なので、清涼院流水みたいな手合でもない。
むしろこのチープさは作中で言及される通りのフェイク・ドキュメンタリー、それも「ほんとにあった!呪いのビデオ」のメイン企画に近く、淡々と時に棒読みに時にわざとらしく時にやらせ丸出しで繰り広げられるグダグダ調査を楽しめる人種には、少しも退屈には感じられないだろう。

というわけでネタになるほど苦行でも問題作でもなく、詠坂雄二を読むならもっと面白い本がたくさんあるし、と本作を読む価値はそんなにない。
ともあれ本格ミステリを離れて明後日の方向に行きそうだった作者が、こうして曲がりなりにもミステリに戻ってきたことは喜ぶべきである


19.8.17
評価:★★☆ 5
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