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ミステリ感想-『そして誰も死ななかった』白井智之

2019年11月30日 | ミステリ感想
~あらすじ~
父の遺品の原稿を自分の作品として出版し、一作限りのミステリ作家となった牛男。
未開の部族を描いたその作品をなぞるような事件が現実に起こり、牛男の身にも奇怪な出来事が。
そしてミステリ作家を招いた孤島でのパーティーで、惨劇は起こった。


~感想~
気鋭の変態本格ミステリ作家(褒め言葉)にかの「そして誰もいなくなった」を魔改造させてしまった異形の作品。
冒頭にゲテモノ料理が出てくるぐらいで今回はおとなしめだと思われるかもしれないが、心配ご無用。いつも通りのエログロ祭りがすぐに始まる。
しかしエログロよりも目立つのは、問題編がわりと前半で幕を閉じ、そこから延々と続く解決編で、視覚的に嫌なグロ手掛かりばかり採り上げての多重推理で、真相が目まぐるしく変わっていく。
しかも(とても探偵役が務まりそうもない面子なのになぜか全員が卓越した推理力を持っているので)全てが一定以上の説得力と、言われてみれば納得の明確な反論、そして見たことない異形の論理で組み立てられているのだからたまらない。
特に真相一歩手前の解決・トリックが超強烈で、たった一つの事象から全ての謎が解けてしまい、しかし真相ではないので丸っ切りの嘘なのだから恐ろしい。
最後に文字通り180度の転換から現れる真相も、前述のダミー解決にインパクトでは劣るが、残された伏線が綺麗に回収される手際の良さを見せてくれる。

個人的な好みで言えば昨年末に刊行された「お前の彼女は二階で茹で死に」に軍配を上げるが、どちらが本ミスで上に来ても全く不思議ではないし、結果がどうなるのか非常に楽しみである。


19.11.28
評価:★★★★ 8
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