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ミステリ感想-『紅蓮館の殺人』阿津川辰海

2019年11月16日 | ミステリ感想
~あらすじ~
高校生探偵の葛城と助手で親友の田所は、合宿を抜け出し山奥の推理作家の邸宅を訪ねる。
だが山火事が発生し、刻々と火の手が迫る中、凄惨な事件が起こる。
殺人鬼はなぜ、この窮地であえて罪を犯したのか?


~感想~
誰だよ講談社タイガなんてラノベ気味レーベルでこんなガチ本格ミステリ出そうと考えた奴はww

高校生探偵と助手、からくり満載の館、山火事という天然の密室の中で起こる密室殺人、異名付きの連続殺人鬼と、THE・本格ミステリな要素が目白押しなだけではなく、名探偵の勝利と敗北、栄光と挫折、過去と未来を描き切ったガチ過ぎる本格。
これを本当に講談社タイガで、千円でおつりの来る価格で売っていいの?
あれか。デビュー作「名探偵は嘘をつかない」がメフィスト賞をパク…真似たカッパツーから2千円で出されたから、対抗して900円で売ったのか。

下衆の勘繰りをしてしまったが、よく考えれば講談社タイガは京極夏彦「百鬼夜行シリーズ」の外伝を出してもいるレーベルでもあり(どちらかといえば百鬼夜行シリーズはラノベよりだけども)、ターゲットにしているのはライト層だけとは限らない。
とはいえミステリ初心者が読めば面食らうような内容だし、設定の割に登場人物も事件数も少ない話を、山火事にいぶされる館と同じように、弱火でじっくりことこと煮込んだド本格で、しかも本格ミステリの数あるギミックの中でも「名探偵」という要素にとことん光を当てた、名探偵の物語でもあるため、やはり訓練された本格ミステリファン向けの作品なのは間違いない。

いずれにしろ、せっかくお求めやすく持ち運びやすい文庫で出してくれたので、本格ミステリファンなら迷わず読んで欲しい出色の作品である。
レーベルで敬遠されなければ本ミスランクインは確実ではなかろうか?


19.11.12
評価:★★★☆ 7
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