最近目に付くのが、子どもの家族に対する暴力である。親から注意されたり咎められて、親を刺したり家に火を放ったりと、一昔前なら考えられないような事件が相次いでいる。子どもが親の言うことを聞かないばかりか、親の命を奪うというのは信じられない。その逆もかなりある。親が、子どもを虐待したり殺してしまう事件である。
日本の法律は、古い言い方であるが「性善説」に基づいているような気がする。犯罪を犯した人たちには理由があり、犯罪は非情でも環境が良くなかったのだということである。つまり環境を改善すると犯罪者は立ち直るという考え方である。ところが、現在起きている親殺しなどは、誰もが羨むような立派な家庭であることが少なくない。むしろそうした家庭の方が事件が頻発しているかに見える。衣食足りて礼節を知らなくなる不思議な現象である。(拙書「そりゃないよ獣医さん」新風舎刊http://www.creatorsworld.net/okai/)衣食が足りると、もっと衣食が欲しいと言うこの社会は異常でないか?
酪農の世界でも似たようなことが起きている。昔なら分娩した子牛を取り上げようものなら、親牛は一晩中返してくれと”モーモー”鳴かれたものである。ところが、いつとはなく子牛への愛おしさがなくなってきた。ひどい牛など分娩している最中の餌を食っていたりもする。子牛を取り上げてもまったく見向きもしない母牛も珍しくもなくなってきた。親子の絆が淡白になってきたのは、乳牛たちの食が足りすぎるためだろうか??