ペシャワール会から号外の会報が届いた。こんなことはあまりない。中村哲医師が取り組んでいた灌漑水路が、一応の完成したのである。この水路には、教えられることがたくさんある。
日本の国際貢献は大量の金をばらまくか、ゼネコンなどの大企業がお決まりの巨大な構造物を建設することと、相場が決まっている。中村医師は、これに真っ向から反対し、日本などから集めた浄財で、地元の人たちを使って土木工事をして水路を完成させたのである。
干ばつが続き廃村が広がる地域に、アメリカのイラク侵攻直後から6年かかって僅か24キロの水路を設けたのである。これで、ほぼ1000町歩の地域を潤すことになるのである。山側に建設し、雨が降ると一時に流れ出し洪水になるのを防ぎ、水路には柳などの植樹をして、緑の回廊を作る。
何よりも驚かされたのは、水路建設に当たって最も役に立ったのは、現地の古い水利施設と、日本の古来からの技術であったとのことである。限られた物量と人力による土木作業は、意図 的ではなく自然と選択せざるを得なかったとのことである。
用水路を構成するものが、石、土、木であることも興味深い。重機にほとんど頼らず、セメントを塗りたくって積み上げたものではないのである。取水は筑後川の山田堰を参考にしている。中村氏は古人の技術に感服している。
アフガニスタンの国民の90%は農民である。水は農民にとって文字通り生命線である。中村氏はまた、日本政府が同じものを建設すると自分たちの建設費用の、20倍はするであろうと述べ ている。しかも、多くの技術者と重機を日本から持ち込むのである。現地雇用はほとんどない。あっても、建設意欲を農民に喚起させることがない作業でしかない。
自らが汗を流して築いた水路である。農民たちは、中村氏たちに感謝し長年にわたってつかわれ続けることになるであろう。
これこそが国際貢献であり、本当の意味でのテロ対策である。目に見える国際貢献である。インド洋上でアメリカ艦船に給油することとは全く異なる、本当の日本が進むべき道がここにある。