左のフォトギャラリーに、<営巣も楽でない>をアップしました。
タンチョウは、1950年代には、僅か13羽が確認されるまでになってしまった。ツルはどんな種でも、渡りをする習性がある。根室地方には夏に来て営巣し子育てをしても、冬には河川がことごとく凍ってしまう。そのために少しでも暖かいところに行って、不凍河川で冬を過ごさなければならない。
身近な不凍河川は、釧路地方にあったがここも餌になるものは、冬にはない。そこで、冬には家畜用の穀物を与えて、保護する人が現れた。こうして、阿寒町と2か所で冬を過ごすことができるようになり、急速に個体を増やすことになった。
しかしながら、冬を人工的な施設や人からの餌で過ごせることになっても、夏の営巣地は自然環境の中でしかすごせない。根室地方では、タンチョウの営巣地になるような湿地でさえ、草地改良されタンチョウたちが喜んで営巣できるところは少ない。
タンチョウが増えたことで、営巣地が狭くなったという農家の意見もあるが、ここは発想を変えてタンチョウが正常な数に戻った時に、元の湿原などがなくなったと考えるべきでしょう。無理やりに草地改良したところは、ろくな草も採れない。
今年、5月の中頃に人工的に開発局が作った池の隅に、タンチョウが営巣したのを確認した。どうやら一羽のように見える。いくら待っても、同伴者が見えない。時折頭を垂れるようになり、衰弱している様子に見えたりする。タンチョウ調査グループによると、頭を下げるのは警戒心を解いているのでないかと説明をうけた。巣に近づくためには、何日もかけて車を慣れさせたりした。
辺りには、キタキツネやカラスやトビがたくさんいる。何より牧草地から丸見えであった。結局は一羽しか確認できなかったが、調査グループではもう一羽も確認していたとのことである。
観察から23日を過ぎ、そろそろふ化する頃であったはずであるが、大雨が続いて巣が水浸しになり、タンチョウは巣を放棄した。所用で2日間留守にしていた間の出来事である。大変残念であるが、彼らは私たちに自然の厳しさと、環境保全の大切さを教えてくれているようである。