昨日のNHKスペシャルは、原爆投下に関して新たな事実を掘り起こした番組であった。日本の諜報機関はそれなりに優れていたようで、アメリカの飛行機の動きや通信内容など、思っていた以上に察知していた。
アメリカに遅れまいと、日本も原爆作成に取り掛かってはいたが、アメリカは製作を断念したと根拠のない理由を付けて、開発できなかった理由を覆い隠した。事実を認めるよりも、自らの立場の言い訳を優先させたのである。戦後官僚に引き継がれているが、日本陸海軍の無謬性体質がここにある。
何よりも、たった一機で来たB19を察知しておきながら、空襲警報すら出さなかった事実には驚かされた。長崎については、5時間前に察知していた。せめて空襲警報が出ていれば、かなりの国民の命が救われたと思われる。
5時間あれば、かなり手ごわい相手とはいえ何らかのことが出来たはずと、紫電改の兵士は唇をかみしめる。軍人として申し訳ないと言っている。
アメリカ空軍の編成についてもかなり詳細に察知していた。特別部隊の存在も彼らは、上部に知らせている。
先週のNHKスペシャルも、広島長崎の原爆の被害実態を、大動員かけた日本の医師団は詳細にまとめあげていが、それをアメリカに渡したという内容のものであった。被害の実態を聞きとられ、報告した人たちは治療などの役立ててもらえるものと期待し、協力した。
ところが、この詳細な被害実態は66年経って、ようやく日本の目に触れたのである。アメリカは、後ほど冷戦の基本戦略に、彼らの報告書を大いに役立てた。核兵器の威力の詳細を把握できたからである。
なぜアメリカに原爆の医学的な意味も含めた、被害実態の報告書を献上したのかという質問に、当時の責任者は731石井部隊の例を上げた。アメリカに心証を良くするためだったというのである。
旧満州で、中国人を生体実験に使っていたデーターを、石井部隊から貰うことで、アメリカは彼らの戦争とはかけ離れた非人道的な行為を、不問にしたのである。それに倣って、原爆被害の詳細な報告書を、被爆者のためではなく、アメリカの冷戦の戦略に役立てさせたのである。
多くの国民は、「お国のために」と死んでいった。そのお国を統治する権力者たちは、国民のことなど考えてはいなかったのである。自らの立場を何より優先する、保身体質は官僚の中に未だに残されている。