NHKBS放送で先日放送された、「戦争記録・日本人と戦争」前編と後編をほとんど見た。2本で6時間にもなるが、これまで撮りためてきた戦争証言をまとめたものである。
証言者のかつての兵士たちはすでに、80代後半になっている。証言後に亡くなられて方も少なくない。
自らの手で、民間人親子を銃殺した人は、涙をこらえることがなく証言している。両親を脳と心臓を打ち抜き銃殺した。その場所に8歳に娘が座 り手を合わせた。両親のところに来たいと言った。
やっと生き残った戦友を、終戦直後に餓死したと年老いた母親には言うことが出来ず、勇敢に闘い銃弾に倒れたと報告した。この老兵士は、涙で嘘をついた正当性と、淡々と語った。
インパール作戦や大陸打通などは、到底実現不可能な作戦であった。食料は現地調達を命じられ、懇願する住民から略奪した。軍の命令である。
あの戦いで死んだ戦友を、無駄死にとはいえない。無駄であったと、次々死んで行った、戦友にどうして言えようか。
南京では、一般人に紛れ込んだ政府軍を区別することなく、殺りくを繰り返した。自らも多くの中国人を殺したと、誰にもこれまで話さなかったと、涙で語る。
虚偽の戦果に湧く日本。それを根拠に遂行された、レイテ戦で戦友が火炎放射機で全身火傷になって火ぶくれ、水が欲しいと言って彷徨い死んで行く様は地獄だと証言する、老兵士。
殆ど戦禍のなかった自爆グライダー”桜花”を設計した技師は、100歳になっていた。設計上の問題は認めた。乗った兵士は全て死んで行った。と怪我で生き残った老操縦士は涙で語ることが出来ない。
兵士たちの年齢は、20歳からせいぜい25歳である。日本は、多くの可能性を地に葬ったのである。
日本人の死者は、310万人といわれている。大敗北したミッドウェーで敗戦を認めていれば、100万に満たない死者で終わらすことが出来た。
大本営は敗戦のシナリオは用意していなかった。そのため、あらゆる戦いに過失を認めず、戦陣訓で鼓舞し惨敗の戦場にひたすら兵士を送り続けた。
老兵士たちはやがて語ることが出来なくなる。その後は想像したくはないが、国家のメンツや利益のために軍隊を増強する人たちが増えて機はしないだろうか。
悪い平和がないように、良い戦争もないのである。