アメリカの一極支配が衰退し、多極化が世界をより一層混乱を深めている。今回のウクライナを巡る一連の、アメリカの対応が象徴的である。
ウクライナは曲りなりもヤヌコービッチ大統領を選択した。その後起きた
政権への暴力的攻撃がエスカレートして、ヤヌコービッチはロシアに助けを求めた。この間、連立などの政権の打診を、プーチンは行ってきたが、それらの全てが拒否される結果になった。
クーデターによる暫定政権が国内法にのっとっていて、クリミヤ議会の決議が違法であるとする根拠は、どちらもない。むしろヤヌコービッチの蓄財の違法性の方が、より明快であるといる。
その後のプーチンの選択ははっきりしている。オバマは、プーチンの腹を読むことができなかったのである。
オバマは、スノーデンの亡命を受け入れたプーチンのしたたかさも、シリアで仲介に入ったふりをして、アメリカの空爆を止めさせた力の政策も読むことができなかった。
オバマは、内政で大きな失態を繰り返して、政権基盤も弱体化している。2期目の末期のアメリカ大統領に起きる、レームダック(びっこのア
ヒル)状態を早々と迎えているオバマを、プーチンは何とも思っていない。
世界の指導者で最も安定した政権基盤にあるプーチンは、クリミヤとロシアの議会に責任を負わせながら、併合に打って出た。彼の周辺は支援者に溢れている。
その裏には、アメリカもEUも実質的な経済封鎖はもちろんのこと、制裁もできないことをプーチンは読み切っている自信がある。今回の政変・クリミヤ併合事件は、プーチンの一方的勝利となった。
オバマは、台頭してきた大国の中国が、ロシアに接近するのをどの程度軽くすることができるか、これからの作業であるが、かつてのアメリカの姿はここにはない。多極化が引き出した、ナショナリズムが世界を席巻し始めている。人類は明らかに、後ろを向いて走り出した。
どの国も、国益を基準に外交をやり始めたのである。21世紀は、混乱の時代となる様相を示してきている。ウクライナの紛争・政変はその兆しである。
羅臼港
春誓い羅臼港