そりゃおかしいぜ第三章

北海道根室台地、乳牛の獣医師として、この国の食料の在り方、自然保護、日本の政治、世界政治を問う

吉川春子のドキュメント「魔の731部隊」を見、戦争の傷跡への謝罪と寛容を

2017-01-08 | 報道
テレビがお茶の間に進出し始めたころ活躍していた、若き稀代のディレクター吉永春子氏が昨年11月に亡くなられた。彼女が注目されたのは、1963年、「松川事件の黒い霧」で第一回のギャラクシー賞を受賞した創生期を支えた人であった。
吉永春子氏の追悼番組が、BS-TBSで7本の作品が放送されている。今日(8日)は3本放送されたが、なんといっても日本中が驚かされた、初めて取り組んだ人体実験の731部隊にメスを入れた、「魔の731部隊ーある傷跡ー」が放送されたのである。戦後30年ほどで関係者はもちろん責任者まで存命していて、吉川は果敢にインタビューをしている。この番組が放送されたのは、1976年である。森村誠一の、731部隊の実態を暴露しベストセラになった「悪魔の飽食」が出版される15年前である。
この番組は多分見たであろうが、ほとんど記憶がない。改めて見て驚かされたことがいくつかある。731部隊は最近の生体実験ばかりで放ったことである。中国人に罪状をつけて拘束し、”丸太”と呼び気が実験や凍傷の実験まで行っていたのである。更にはレントゲン照射を肝臓に行い、死亡の限界を確認していたり、チフス菌を入れたトマトを町にばら撒き、一般市民をもターゲットにした無差別殺人の実験行われていた。生体解剖(生きたままの中国人を解剖する)も行われていた。
一般軍人すら知らない時点で、終戦の直前に”丸太”を全員殺害し施設を爆破している。実験データーは要人が持ち出し、戦後アメリカに石井四郎が提供している。朝鮮戦争で使われた痕跡すらある。
アメリカに資料を提供することで、731部隊の要人たちは東京裁判などで裁かれることもなく、戦後のうのうと生き延びて医療関係者は大学の医学部などの要職についている。
戦争に科学は加担し利用される。科学者にとって実験動物より人体実験の方が、よほど正確で実用的なデーターが得られる。戦争は科学から理性をも奪い取る。そして戦後も彼らは国家に貢献した人物として、時には公に時には秘かに高く評価するのである。731部隊によって殺害された中国人の数はいまだに不明である。日本は謝罪はもちろんのこと事実関係すら認めるに至っていない。真珠湾で寛容を誇示して見せたが、もっと先にやらなければならないことが沢山ある。
番組はCMを入れずに紹介され、TBSの誠意が感じられた。来週もう二本放送される。吉川氏の冥福を祈りたい。
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