詩はどこにあるか(谷内修三の読書日記)

日々、読んだ本の感想。ときには映画の感想も。

中井久夫訳『現代ギリシャ詩選』読む(14)

2023-07-12 17:34:20 | 中井久夫「ギリシャ詩選」を読む


  「イオニア」。「神」ということばが何度か出てくる。その「神」ということばよりも、強烈に「神」を感じさせることばがある。「暁」だ。

八月の暁がきみの番をしている時、

 この「暁」が「神」を感じさせるのは、それにつづくことば「番をしている」ということばの強さのためだ。「番をしている」は「見張っている」。そして、それは「見張っている」よりも強く響くのは、「番をしている(番をする)」が口語というか、肉体を感じさせるからだろう。
 ほかのひとは「番をしている」をどうつかうか知らないが、私はこどものとき、よく親から「火の番をしていてくれ」とか「豚の番をしていてくれ」と言われた。「番をする」には、何か「順番に何かの面倒を見る(世話をする)」というような響きがある。それは「私」を「他人」につなげる。「見張る」にもつながりがあるだろうけれど、私は「番をする」に、それを強く感じる。「火の番をする」とき、私はこどもではなく、父と同じように家を守る、その父につながる感じ。
 この「つながり」の感じが、とてもいい。
 「神」を信じる、信じないはひとそれぞれだが、「神を信じる」とは「神」とつながることだ。そして、それはこの詩の場合(私の引用した一行だけではわからないと思うけれど)、「神」が人を見捨てないというつながりをも生み出す。幾人もの「神」が順番に、「きみの番をしている」。その書かれていないが「幾人もの」というつながりが「暁」の光のなかに広がっている。「暁」は、毎日毎日、あきらめることなく、きみのところへやってくるのだ。それは、けっして終わることのない、永遠だ。


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Estoy Loco por España(番外篇377)Obra, Mohamed Diouri Benyelun

2023-07-12 14:44:11 | estoy loco por espana

Obra, Mohamed Diouri Benyelun

 ¿Dónde está este mar? O tal vez la tierra, pero pinso en el mar. Si el mar de Paco es el mar del norte, el de Mohamed es el mar del sur. Un mar que nunca he visto.
 El sol brilla directamente en lo alto y las olas son rojas, amarillas, azules y negras. Aquí no hay olas blancas que traiga el viento. No hay casquetes de olas. Las olas sólo ondulan. Si naufragara aquí, el barco no se hundiría en el fondo del mar, sino que resplandecería y se elevaría hacia el sol.
 Otra obra podría ser el mar en calma de un atardecer cansado tras una agotadora sesión de ejercicio. O podría ser la tierra, pero quizá para Mohamed el mar es la tierra y la tierra es el mar. El mundo es un lugar donde los colores se afirman.

 これは、どこの海だろう。あるいは大地かもしれないが、私は海を思い浮かべた。Pacoの描く海が北の海だとすれば、Mohamed が描くのは南の海。私が見たことのない海。
 太陽が真上から照らし、波は赤く、黄色く、青く、そして黒く輝く。ここには風を運んでくる白い波などない。波頭などない。波は、ただうねる。ここで難破したら、船は海底に沈まず、燃え上がって、太陽に向かって上昇するだろう。
 もう一枚の絵は、激しい運動のあとの、疲れた夕方の静かな海かもしれない。あるいは、大地かもしれないが、たぶんMohamed にとっては海は大地であり、大地は海なのだろう。世界は色彩が自己主張する場なのだ。

 

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