詩はどこにあるか(谷内修三の読書日記)

日々、読んだ本の感想。ときには映画の感想も。

中井久夫訳『現代ギリシャ詩選』読む(16)

2023-07-19 15:57:41 | 中井久夫「ギリシャ詩選」を読む

 「イタカ」を目指す船。いったい何があるか。

「冒険がうんとあるように」

 「うん」という口語がおもしろい。「たくさん」よりも、もっと砕けている。ひらがなで書くと二音だが、口語ではほとんど一音だろう。この短さがとてもいい。こころが、そのまま声になって出てくる。ことばにする前の、あるいは、ことばが不要の欲望。さらにいえば、ことばとして整えられる前の欲望と夢。
 この反対の、とても長い行がある。
 一行だけの紹介という「ルール」を破って、書いておこう。邪魔者が来るとしたら……。

来るとしたらきみの心に棲んでいる奴。きみが自分の行く手に奴らを置くのさ。

 他人が語っているようにも読むことができるが、どちらも主人公が語っている。一人で対話している。だからこそ、「心」ということばもある。「こころの中の対話」。そのときの、ことばの「長短」がおもしろい。不安と期待と祈り。こころの揺れが、音、リズムとして動いている。

 


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Estoy Loco por España(番外篇380)Obra, Alfredo Bikondoa

2023-07-19 09:41:08 | estoy loco por espana

Obra, Alfredo Bikondoa
LIMITLESS SERIES

 En el momento en que vi esta obra, puedo ver la cara de un hombre, aunque no sé por qué. Sentí su mirada. Es una mirada que me está mirando, ocultando su rostro con las manos. Es una mirada que quiere hacerme saber que intenta ocultarse, mientras se niega a ser visto por mí.
 ¿Cuándo fue la última vez que sentí este tipo de mirada? ¿Fue una mujer o un hombre? ¿Fue un niño o un adulto? O tal vez fue un perro. Podría haber sido un pájaro. No lo recuerdo, pero sí recuerdo una mirada así. No puedo olvidar ese mirada.
 Beige y azul y negro. Es la voz de una mirada mixta: no mires, mira, no olvides, olvida. Tal vez no sea lo que vi, tal vez no sea lo que oí, tal vez sea mi retrato, mi grito. Por eso lo recuerdo. Nadie olvida su propio rostro.Como si me mirara en un espejo, me siento atraído por esta obra.

 この絵は見た瞬間、理由はわからないが、男の顔が見えた。視線を感じたのだ。それも手で顔を隠して、私を見ている視線だ。それは私に見られることを拒否しながら、隠れてみていることを知ってほしいという視線だ。
 こういう視線を最後に感じたのは、いつのことだった。女だったか、男だったか。子供だったか、大人だったか。あるいは、犬だったかもしれない。鳥だったかもしない。覚えていないが、そういう視線があることは覚えている。忘れることができない。
 ベージュと青と黒。それは、見ないで、見て、忘れないで、忘れろという交錯した視線の声だ。それは、もしかすると私が見たものではなく、私が聞いたのでもなく、私の肖像画であり、私の叫びかもしれない。だから覚えているのだ。自分の顔を忘れる人間はいない。鏡を見るように、私は、その絵に引き込まれていく。

 

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