2時間30分の映画の主人公は勿論梅蘭芳であるが、もっと言ったら1920年から1950年にかけての梅蘭芳と彼の周囲の人々の物語でもある。
若き日の師との確執。彼の才能を信じ、社会的地位を捨てて彼と人生をともにした元官僚との義兄弟の契り。梅蘭芳の存在が新しい改革となっていくという、彼の芸の道を描きながらも、そこで語られるのは京劇の歴史だ。
1930年、男形女優小冬との別れ、そして大恐慌の中でのNY公演。
芸という孤独な世界で一人戦い続ける梅蘭芳の姿を追いかけながらも、そこで描かれるのは小冬という女優と、女優の道を捨てて彼の妻になった芝芳という二人の女性の姿だ。
1940年代、日本軍の中国侵攻が進み、北京から上海へ香港へと居を移す彼。舞台に立つことを拒むようになる梅蘭芳の姿と一緒に語られるのは、梅蘭芳の芸を愛した一人の日本人将校の姿だ。
***
梅蘭芳を演じるのは黎明(レオン・ライ)だが、彼にばかりずっとスポットが当たっているわけではない。ツイ・シャオチュンが演じる青年時代が1時間近くもあるし、後半も彼だけの姿を追うのではなく、彼が歩んだ時代と彼とともに歩んだ人々を時間の流れとともに上手く追いかけている映画なのだ。
特にチャン・ツィイーが出演している場面は、梅蘭芳の映画というよりも彼女が演じている孟小冬という男形女優の映画になっているのが凄い。
終始白いスーツ姿のレオン・ライはどこかはっきりせず、主導権はすっかりチャン・ツィイーの方に行ってしまっているのである。
勿論それで終わるわけではなく、日本軍の侵攻によって芸の道から離れていくところは、青年将校を演じる安藤政信の演技もいいし、梅蘭芳を演じるレオンが見せる悩む姿には、白いスーツ姿の時には感じられなかった落ち着きがあり。
「さらば、わが愛 覇王別姫」とこの先もずっと比較される映画だろうが、さらばが愛に対して内向きな姿を描いているとしたら(私はあの映画をとても内向きな映画だと思っている)こちらは時間の流れに乗っていく映画だと思う。
向かっている先が違うのだから、比べることにはあまり意味がないかもしれない。
梅蘭芳の妻芝芳を演じるのは監督の妻チェン・ホン。
ある意味、全編通してずっと見せ場があるのは彼女だけだ。
***
疲れて眠ってしまうかもという心配は杞憂に終わる。
衣装は綺麗だし、レオンの白塗りにも目を奪われ、眠っている暇などなかった。
北京の寺院で祈念したお守り(先着8888名にプレゼントらしい)梅花御守ももらったし、満足の2時間半だった。
****追記****
キネマ旬報 三月下旬号の伝説の京劇俳優 梅蘭芳 という特集記事の中に食事にも気をつかった梅蘭芳という記述あり。
役者として、常に体調や声に気を遣った彼の食事を再現した高級レストランもあるが、細かくした野菜の入った鳥のお粥をいつも食べていたのだという。
映画の中でもなんどもお粥をすするシーンあり。
とてもおいしそうに食べているとは言いがたかった。
栄養を摂取するという言葉がぴったりな食事のシーンだったような気がしたのだが、それにはこんな風な背景があったらしい。
また激しい文化大革命の嵐の前に亡くなったらしい。もし文化大革命の荒波に飲み込まれていたらどんな風になっていたのだろうか。
若き日の師との確執。彼の才能を信じ、社会的地位を捨てて彼と人生をともにした元官僚との義兄弟の契り。梅蘭芳の存在が新しい改革となっていくという、彼の芸の道を描きながらも、そこで語られるのは京劇の歴史だ。
1930年、男形女優小冬との別れ、そして大恐慌の中でのNY公演。
芸という孤独な世界で一人戦い続ける梅蘭芳の姿を追いかけながらも、そこで描かれるのは小冬という女優と、女優の道を捨てて彼の妻になった芝芳という二人の女性の姿だ。
1940年代、日本軍の中国侵攻が進み、北京から上海へ香港へと居を移す彼。舞台に立つことを拒むようになる梅蘭芳の姿と一緒に語られるのは、梅蘭芳の芸を愛した一人の日本人将校の姿だ。
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梅蘭芳を演じるのは黎明(レオン・ライ)だが、彼にばかりずっとスポットが当たっているわけではない。ツイ・シャオチュンが演じる青年時代が1時間近くもあるし、後半も彼だけの姿を追うのではなく、彼が歩んだ時代と彼とともに歩んだ人々を時間の流れとともに上手く追いかけている映画なのだ。
特にチャン・ツィイーが出演している場面は、梅蘭芳の映画というよりも彼女が演じている孟小冬という男形女優の映画になっているのが凄い。
終始白いスーツ姿のレオン・ライはどこかはっきりせず、主導権はすっかりチャン・ツィイーの方に行ってしまっているのである。
勿論それで終わるわけではなく、日本軍の侵攻によって芸の道から離れていくところは、青年将校を演じる安藤政信の演技もいいし、梅蘭芳を演じるレオンが見せる悩む姿には、白いスーツ姿の時には感じられなかった落ち着きがあり。
「さらば、わが愛 覇王別姫」とこの先もずっと比較される映画だろうが、さらばが愛に対して内向きな姿を描いているとしたら(私はあの映画をとても内向きな映画だと思っている)こちらは時間の流れに乗っていく映画だと思う。
向かっている先が違うのだから、比べることにはあまり意味がないかもしれない。
梅蘭芳の妻芝芳を演じるのは監督の妻チェン・ホン。
ある意味、全編通してずっと見せ場があるのは彼女だけだ。
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疲れて眠ってしまうかもという心配は杞憂に終わる。
衣装は綺麗だし、レオンの白塗りにも目を奪われ、眠っている暇などなかった。
北京の寺院で祈念したお守り(先着8888名にプレゼントらしい)梅花御守ももらったし、満足の2時間半だった。
****追記****
キネマ旬報 三月下旬号の伝説の京劇俳優 梅蘭芳 という特集記事の中に食事にも気をつかった梅蘭芳という記述あり。
役者として、常に体調や声に気を遣った彼の食事を再現した高級レストランもあるが、細かくした野菜の入った鳥のお粥をいつも食べていたのだという。
映画の中でもなんどもお粥をすするシーンあり。
とてもおいしそうに食べているとは言いがたかった。
栄養を摂取するという言葉がぴったりな食事のシーンだったような気がしたのだが、それにはこんな風な背景があったらしい。
また激しい文化大革命の嵐の前に亡くなったらしい。もし文化大革命の荒波に飲み込まれていたらどんな風になっていたのだろうか。