熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

メトロポリタン・オペラを世界の映画劇場でライブ放映・・・モーツアルト『魔笛』

2007年01月02日 | クラシック音楽・オペラ
   ニューヨーク・メトロポリタン・オペラが、12月30日のマチネ公演モーツアルトの『魔笛』を全米のみならず、イギリスやノルウェーなど外国へもライブ配信して映画劇場で上映された。
   日本でも、木挽町の歌舞伎座で、大晦日の午後2回に亘って上映されて、日頃の歌舞伎公演とは違った面白い雰囲気を醸し出していた。

   松竹が歌舞伎座での玉三郎の華麗な舞踊公演を劇場映画にして上映して成功を収めているが、今回のMET公演は正にライブ(日本の場合は、時差等の関係で録画)で、失敗が許されない待ったなしの上映でIT革命の粋である情報通信技術が問われている。
   ニューヨークタイムズの報道では、事前に切符売り切れ劇場も多く出て、全米百の映画劇場で放映されたので多少トラブルはあったようだけれど、大半のお客はオペラファンのようだが中年以上の人たちが子供を連れて来ていて可なり好評であったと伝えている。

   私自身、アメリカに居たときからだから30年以上になるが、その後ニューヨークに出かける度毎に訪れているから、METでのオペラ鑑賞は可なりの回数になるが、とにかく、スカラ座やウィーン国立歌劇場、ロイヤルオペラ劇場などのヨーロッパの劇場とは一寸違った独特の華やかな雰囲気があって何時もワクワクさせてくれる。

   ところで、今回の「魔笛」は一寸変っていて、あのミュージカル「ライオン・キング」で有名なジュリー・ティモアによる演出による非常にカラフルで鳥が空を舞い熊が踊り夜の女王が星に包まれる幻想的で美しい舞台が展開されていて実に見ているだけでも楽しい。
   それに、MET初のホリディ・ファミリー・オペラとして詩人マッククラッチィ新訳による休憩なしの100分間のコンパクトに改変された英語バージョンで、何時も観慣れている「魔笛」の舞台と違っていて多少違和感はあるが、だれさせずに分かり易く一挙にオペラを楽しめる分、上出来である。
   開演前に、スクリーンでは、幕が下りたままで楽団員たちのチューニングの音が聞える客席の模様が放映されていてオペラ劇場にいるような雰囲気にさせてくれる。
   多少耳障りで不快感を感じたので歌舞伎座の音響機器の質と録画システムに問題があるのであろうか。しかし、舞台が始まるとドラマチックな展開に気が取られてあまりサウンドの質は気にならなくなった。
   幕が開く前に、ピーター・ゲルブ総支配人の挨拶と舞台裏が映されていて中々面白かったが、ジェイムス・レヴァインが指揮台に立つと、もう、メトロポリタン・オペラ劇場の雰囲気がむんむんする正にMETの舞台である。 
   
   中国北京生まれのMETデビューの新人ソプラノ・イン・ファンの清楚で澄んだ美しいパミーナの歌声、陽気でコミカルで動きが軽快で温かい感じのバリトン・ネイサン・ガンのパパゲーノ、個性的でドラマチックで舞台を圧倒するハンガリーのソプラノ・エリカ・ミクローザの夜の女王、など印象的な歌手の歌唱と演技に魅せられていたが、勿論、テノールのマッシュ・ポレンザーニの粋なタミーノやバスのルネ・パーペの圧倒的な凄いザラストなども実に上手くて楽しい舞台であった。

   このMETのライブ配信は、この後、ベッリーニの「清教徒」から更に4演目続くのだが、ドミンゴが歌うタン・ドンの「始皇帝」やルネ・フレミングの歌う「エウゲニー・オネーギン」等はMETでもチケットがソールドアウトで大変な人気である。
   METに行きたくなったが、行けなければ、DVDで見るよりは結構臨場感豊かな映画劇場で4000円払ってでもMETライブを楽しめるのも悪くはない。

   大晦日当日、このMETライブの後半3時半からのチケットを手配してしまったので、文化会館のベートーヴェン全交響曲演奏会とダブってしまって、カーテンコールを端折って急いのだが、残念ながら大友直人指揮の「交響曲第三番英雄」を聴き逃してしまった。
   その時になってから考えようと思って、これまで海外でも綱渡りのダブルブッキングが結構あったが、チャンスを見逃すよりはその方が良いとは思っている。
コメント
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