熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

バイオ燃料に託す・・・未来のエネルギー源か

2007年01月24日 | 地球温暖化・環境問題
   昨夜のブッシュ大統領の年頭教書スピーチをCBSテレビの電子版で見た。
   50分弱の演説だが、始めは通しで、次は、ホワイトハウスのホームページからプリントアウトしたTEXTを見ながらポイント点だけ聞いた。
   相当部分はイラク戦争での自己主張や今回の増派等についてだが、丁度、前日に、Bio Fuels Wrold 協議会主催の「バイオ燃料の未来~安定供給に向けた今後のシナリオ~」と言うシンポジュームを聞いていたので、ブッシュ政権のエタノール燃料に対する対応に興味があった。

   ブッシュ大統領は、大きく膨らむ未来への希望と機会は、アメリカ経済を持続発展させ環境をクリーンに保つことの出来るエネルギーの安定供給にかかっていると問題提起しながら、まず、長年に亘る外国産石油への依存の危険性、エネルギー源の多様化の必要性、そして、クリーンな石炭技術、太陽光や風力、クリーンで安全な原子力等による発電について言及した。
   続いて、ハイブリッド・カー、クリーンなジーゼル車、バイオジーゼル燃料の必要性を語り、更に、木材チップ、雑草、農業廃棄物等あらゆる物(everything)を原料にしてエタノールを生産できるような新しい生産システムを開発する為に投資の必要性を説いた。

   今後10年間に、アメリカでのガソリンの使用量を20%削減し、それによって、中東からの石油輸入量を4分の3削減する。
   この為に、代替エネルギーの開発が必須であり、2017年までに、現在の法定目標の5倍の350億ガロンの再生可能燃料や代替燃料を要すると言う燃料基準を設定し、同時に、車に対する燃費基準を改革して85億ガロン以上のガソリンを節約しなければならないとも言及した。

   興味深いのは、京都議定書を蹴って、環境問題について殆ど一顧だにしなかったブッシュが、珍しく、過度な石油依存症から脱却する為の技術開発の必要性を説いた後で、このような技術が、グローバルな気象異変に対する深刻な挑戦(the serious challenge of global climate change)に直面する助けになるであろうと言って、気候異変について言及したことである。
   各州が環境保護に動き始め、産業界からも強力な環境保全要求が起こり始めており、いくら石油業界の利益代表であり大企業利権擁護派のブッシュでも、愈々抵抗出来なくなって来たと言うことであろうか。

   日本は、3%エタノールを混入したガソリンの試用段階だが、アメリカでは5%基準で動き出しているようで、エタノール先進国のブラジルには及ばないが、エタノール生産量はほぼブラジルに追いつきつつあるようで、バイオ燃料生産に関する研究や技術開発が相当進んでいるようである。
   このバイオ燃料の開発及び増産は、原料となるトウモロコシなどの農産物を生産するアメリカ農業にとっては朗報だが、スティグリッツによると補助金漬けでやっと国際競争力を維持している状態であるから、アメリカ経済にとって別な影響を与えるかも知れない。
   日本の場合は、バイオ燃料の生産がまだ小規模の段階なので生産コストが高くて、ヨーロッパのように補助金で埋めるか税金を免除するなどしないと競争力がない。しかし再生エネルギーであり地産地消であるなどメリットは多い。
   何れにしろ、トウモロコシ生産のためには膨大な量の水資源が必要で、中国ではエタノールは難しかろうと言われているが、先日、地球の悲鳴についてのブログで言及したアマゾンの環境エコシステムの破壊や水資源に対する国際紛争などセキュリティの問題もあって、石油からエタノールへの転換と言っても、グローバルベースで色々な資源や環境問題を引き起こす心配がある。
   
   日本でも、バイオ燃料普及へ新法を制定する検討に入った。
   将来3%基準のバイオ燃料の混合比率を上げて行くようになるのであろうが、安価なエタノール等を大量生産するためのもっと革新的なイノベーションの開発のみならず、導入に伴う関連産業への対応など経済社会体制の整備も含めて問題点は多い。

   余談だが、もう30年近く前、サンパウロで自動車(フォードが現地生産していたマベリック)を運転して坂道(坂が多い)を上り下りしていたが、ブラジルのガソリンは混ぜ物が多くて、よく運転中にプシュっとエンジンが止まって困ることがあった。
   その後、ブラジルは、石油危機でブームが終息して、経済が異常に悪化して、ガソリンの代わりにアルコール自動車の開発を始めた。必要は成功の母の正に実例で、農業国ブラジルの再生可能な代替エネルギーへの転換が始まったのである。
   その後、アルコール混入自動車に乗ったが異質感はなかった。好い加減なガソリンに慣れていたので、ブラジルのエタノール転換技術の開発が早かったのではないかと素人考えで思っている。
   
   再度付言するが、レスター・ブラウンが言うように、ガソリンからエタノールへの転換は、エタノールの原料がトウモロコシや小麦などの農産物であれば、穀物価格を吊り上げて、食糧危機に泣くアフリカやアジアの極貧国の人びとの生活を更に悪化させる。
   それに、水資源の浪費と世界的争奪戦が始まるのみならず、地球の砂漠化等の深刻な環境問題も惹起する。
   バイオ燃料への転換は、あくまで資源の用途の転換であって、革新的な技術開発で不要な廃棄物や雑草や雑木など未使用の資源を活用してバイオ燃料を生産しない限り、根本的な問題の解決にはならないのである。
   

   
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