熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

ドイツのマイスターの仕事・・・品質管理の本質

2007年10月01日 | 経営・ビジネス
   私は、岡野雅行さんが、今様の本当のマイスター、それも、極めてイノベイティブなマイスターだと思っているが、今日は、岡野さんの話ではなく、ドイツ製の時計の話である。
   我が家のダイニングの壁に、ブダペストで買ったヘレンドの陶器製掛け時計が架かっているが、このヘレンドの飾皿に嵌め込まれた何の変哲もない時計が、素晴らしく品質が良いのである。
   ベルリンの壁の崩壊の後にハンガリーに行った時に買い、ロンドンでも使っていたのだから、もう20年近くも使い続けているが、電池の入れ替えの時以外には、文字盤に触れて時刻を合わさないのに、殆ど、狂わずに正確な時刻を刻み続けている。
   勿論、口絵写真の如く、皿に穴を開けて、時針を取り付けただけの簡素な時計なので、何の覆いもなく外部にむき出しのままなのだが、その正確さは、人間の心臓並みである。

   この時計の価格は、当然、ヘレンドの価値であろうから、時計部分はただの部品と言うことかもしれないが、背後に書いてある文字 KIENZLE QUARTZ GERMANY に興味を感じて、インターネットでホームページを開いてみた。
   "Only the Best is good enough", became the Misson Statement of Quality for the Company. と宣言しているKINZLEと言う西ドイツの立派な時計製造会社で、1822年、スイスとの国境近くの町SchwenningenでJ.Schlenkerによって創立され、その後、19世紀から20世紀にかけて、工学博士で企業家のJ. Kienzleが、正確性をモットーとした素晴らしい時計会社に脱皮させたのだと言う。
   この私の時計が製造されたのは、ベルリンの壁崩壊直後の混乱期のハンガリーのヘレンドなのだが、両国の貿易関係は正常に営まれており、世界に冠たるヘレンドとしての誇りと言うかクラフトマンシップが、この時計の質の高さを維持しているのであろう。
   ところが、家内が作ったアントン・ピークの絵を造形した掛け時計キットについている同じ様な時計だが、MADE IN JAPANと書かれたTAKANOの時計。日本製かどうかは怪しいが、どれもこれも数ヶ月で、時刻が完全に狂ってしまい使い物にならなくなり、折角の壁掛けなので、誤解を招くと困るので他人の目がとどかない所に時間を12時に止めて掛けたままにしてある。
   こんな製品は、製造すること自体が既に商業道徳違反であるが、売る方にも安ければ良いというモラルの欠如があり、日本の業者の仕業が悲しい。

   書棚の中に、2つの小さな置時計がある。
   一つは、スイスのみやげ物店で買ったDAINE HANDARBEIT とだけ書かれたくるくる回って時を刻む時計だが、これも、電池を換えるくらいで殆ど時刻の調整をしなくても10数年正確に動き続けている。
   もう一つは、イギリスの超有名店 MAPPIN & WEBB の12 gewls と書かれたずっしりと重いゼンマイ仕掛けの高価な時計だが、これは、古い様式のままの時計なので、時間が問題ではなく飾り物。ねじを回すのが億劫なので止めたままである。

   ライカのR3サファリは、何処がどうなったのか忘れてしまったが、一度修理に出したくらいだが、メカニカルな製造物におけるドイツ製品の質の高さは、やはり、マイスターの伝統が息づいているのか、世界最高水準のようである。
   いま、中国製品の質や安全について問題視されているが、日本の製品も最近は、IT製品の組み込みが増えて怪しくなって来ている。
   銘柄は秘すが、私自身、日本の電化製品やカメラ関連商品などトラブル続きで困っているのだが、これでも中国を非難できるのであろうか。
   電池や車など、売れれば売れるほど、欠陥商品のリコールが激しくなってきているが、しかし、欠陥率は、0.000…と気の遠くなるような確率。しかし、日本のトップ企業の製品でも、故障や機能不全など顧客を困らせる欠陥が、非常に多くなっており、メーカーは十分注意しないと消費者にソッポを向かれてしまう。

   ところが、一つだけ、満足している飛び抜けて素晴らしい日本製品がある。
   カシオのsolar cell SL-821と言う太陽電池組み込みの電卓である。
   ソーラー電池の電卓が出始めた頃だから、もう25年くらいになると思うのだが、ブラジルへの土産に買って手元に残った一つを愛用しているのだが、名刺サイズより一寸大き目の薄型で、タッチボタンの感触と言い数字の鮮やかさと言い、これまで、いくつも使い潰した電卓と比べて最も良かったと思っている。
   この電卓を持ち歩いていたので、40カ国以上の国を付き合ってくれたのだが、ケースが擦り切れそうになっているが、今でも、私の卓上で現役であり、正確に綺麗な数字をディスプレイしてくれている。
   
コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする