熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

労組:ハゲタカ・ファンドと徹底抗戦すべきである

2007年10月11日 | 政治・経済・社会
   朝日新聞が朝刊で、「対ファンド 労組動揺 企業買収攻勢 対応手探り」と言う記事を大見出しで掲載していた。
   「投資ファンドが高配当や株価の上昇のみを追求するのは問題。単組、構成組織を最大限支援していきたい」と連合の高木会長が、ハゲタカ・ファンドの理不尽な要求で会社がガタガタにされて振り回されている従業員の苦悩を代弁して、投資ファンドと労組をテーマに開かれたシンポジウムで語ったと言う。

   多少下火になったとは言え、何故、こんなことが頻発するのか。それは、何の経済社会体制の準備も整っていない日本に、何の手当てもせずに無防備に、アメリカ型の弱肉強食の自由競争の法体系を、跳ね上がった経済産業省の役人主導で導入して会社法や証取法など一連の法制度を変えてしまったからである。
   ブルドックソースにM&Aを仕掛けたスティール・パートナーズなど目に余る行為が目立つが、本来、アメリカでは認められないような違法行為を、法整備の不十分さの虚を突いて日本で行って、金儲け一途に傍若無人に振舞って狂奔している。
   新聞記事のパネラーの写真に写っていたので、こんなことを早稲田大学の上村達男教授が発言されたのだろうかと思ったのだが、私は、教授のこのような主張に全面的に賛成で、人類が営々として築き上げてきた公序良俗、市民社会のベスト・プラクティスを絶対に守るべきであって、法の抜け穴を利用して利を追求するなど許せないと思っている。

   会社は株主のもので、そのために、会社の時価総額をアップして企業価値を上げて株主に奉仕するのが経営者の最大の義務だと言った議論が展開されていた。
   村上ファンドやライブドア問題などは、その頂点の産物で、株さえ握れば株主は何でも出来るのだと言う風潮が蔓延して、企業は戦々恐々となり、こぞって企業防衛策準備に奔走し始めた。

   東大の岩井克人教授が、会社は株主のものだと言う見解を否定している。
   会社はモノとヒトの両方の要素を持つ二階建て構造になっていて、株主はモノとしての株を保有し、会社はヒトとして会社財産を保有する。
   ポスト産業社会では、イノベイティブな差別化を生み出し富を創造する源泉はヒトであり、会社の一面である株主主権論を振り回しすぎると有能な人材は逃げてしまう。
   日本の経営は、株主の力を弱めて、従業員にロイヤリティと創意工夫をそくする体制をとって成長して来た。
   ヒトが大切であり、企業買収は、ヒトの組織を買うのも同然であるから、敵対的買収は馴染まない。

   上村教授は、もっと激しく株主主権論を糾弾する。
   株主は、お金を借りられたから株を買えただけで、たった30人くらいの株主の村上ファンドが、何千万人のステークホールダーを持つ阪神を支配し勝手なことができると言う構図こそ、企業と市場と市民社会と言う観点から日本人が懸命になって戦うべきである。
   バカな法改正で、日本の企業法制、資本市場法制というのはここまで野放図に許してしまって、不備な法の抜け穴をついて暴利を貪ればやり得で、その後から追っかけて違法となるのが現状の日本。

   成熟社会のヨーロッパでは、市民社会の公共、コモンズが重視されており、所有と言う概念も公共性の前には犠牲をはらわなければならないと言う考え方が徹底しており、この公共と交わる所有への制約が大きく、真の意味の個人の所有の絶対性が強調されている。
   企業買収は勿論、このような考え方の基に法体系が整備されており、例えば、イギリスでは、企業買収ルールであるシティコードに詳細に規定されており、シティパネル(委員会)に聞けば直ちに答えが返ってくる。ところが、日本では個々に弁護士事務所に無駄な高い金を払って防衛策を整備しなければならず、法体系の不備はここに極まれりである。

   一方アメリカでは、確かに、法体系は自由だが、連邦ベースの統一商法典がないけれど、各州が反テークオーバー法を持っており、支配株主の忠実義務の法理があるなど各種の網がかかっていて、不条理な企業買収はロックされるようになっているので、何の法体制の準備のない日本がアメリカのライツプランの部分だけを導入するのは短絡的だと言う。

   資本市場法制が不十分だから怪しい買収者が出てきて、企業結合法制がないから支配しても責任を持たない株主が存在しうる。ましてファンドは、本当の株主の匿名性を維持し続けたまま自分が株主だ、所有者だと大きな顔をして言いたい放題のことを言って経営者を攻め立てている。
   国は統一ルールを作ろうとしないが、実に無責任で、年金不祥事に匹敵する大問題だと言う。
   日本は世界一買収しやすい国になってしまったので、新日鉄でさえミタル・スチールに買収される心配があり、企業買収防衛カルテルのような協定を結ぶなど防衛に努めざるを得ないが、これが経済産業省の方針なら、何処か、日本はおかしくなり過ぎたのではないか。

   アメリカ型の法を導入したが、法制度の整備が不十分な日本で、形式解釈が横行しているので、やった時は何でも適法、その後に法を改正して違法と言うことが続いている。
   卑劣な抜け駆け行為や脱法行為が肯定され成功者として扱われているのが今の日本。法制度が完備するまで、実質解釈で切り抜けざるを得ないが、悲しいかな、最高裁判事には、商法・会社法の専門家は一人もいないと言うお粗末さだと言う悲しい現実。

   とにかく、連合など会社従業員は、違法なファンドの横行で泣いているのなら、法制度の理不尽さをつき実質解釈を求めてハゲタカ・ファンドと徹底抗戦をやるべきである。
   会社は株主だけのものではなく、従業員のものでもあると思えば戦える筈である。
   
   
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