熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

低炭素化社会を目指すドイツのエコロジー近代化政策

2007年10月18日 | 地球温暖化・環境問題
   オホーツク海の紋別に、40キロのマグロが陸揚げされてセリにかけられた。
   暖海のプランクトンが増えて、マンボウやカツオや鯛など他の南の海の魚も陸揚げされており、冷たい海の魚が駆逐されそうだが、それもこれも、総て地球温暖化の所為だと言う。
   地球変動に対する政府間パネル(IPCC)とアル・ゴア元副大統領がノーベル平和賞を受けることになったが、正に、宇宙船地球号の危機がそこまで差し迫っていることを世界中に示した快挙である。

   日経ホールで、地球環境戦略研究機関などの主催で、「低炭素社会を目指した産業構造変革への挑戦」をテーマに国際シンポジウムが開かれた。
   低炭素化を目指した産業構造の変革に向けての試みについて、欧米日の関係機関が最近の動向と問題などについて報告し討論されたのであるが、やはり、国や地域に応じて同じ目標に向かっていても、温度差や哲学などに差があって興味深かった。

   先のハイリゲンダムG8サミットにおいて、日本主導で合意された「脱温暖化2050プロジェクト」では、2050年までに温暖化ガス排出量を1990年レベルを50%削減すると言う長期目標を掲げているのだが、私自身は、それまで、人類の歴史が持つのかどうか疑問に感じている。
   勿論人類が滅びると言う極端なことではなく、例えば、カタリーナ級の台風が、年に2~30襲ってきたり、海水面の上昇で多くの臨海大都市が水没し、逆に地球の半分が砂漠化するなど、天変地異が激しくて人類が正常な文明生活を継続出来なくなっているであろうと言う心配である。

   先のシンポジウムでは、世界経済フォーラムやEUなどヨーロッパの取り組みが報告されたが、興味深かったのは、ヘルムート・ヴァイトナー氏の語ったドイツの「エコロジー近代化 Ecological Modernization」と言う概念とその取り組み方であった。
   経済的な利益や利便性、環境問題の解決、国民の福祉の向上などを目指して近代化を図ろうと言う政策だが、2020年目標では、温暖化効果ガスを30~40%削減、エネルギー効率3%/年アップ、20%の資源再利用、コ・ジェネ25%など高度なターゲットを設定している。
   欧米で一般的な、持続可能な社会(Sustainable Society)と言ったグローバルベースの視点での環境対応の政策ではなく、あくまで、環境改善など国内の近代化に的を絞ったプラグマチックな政策だと言う。
   アメリカやBRIC’sなど世界の経済大国が環境問題に熱心でなく、ドイツ国内の止むに止まれぬ危機意識の発露であって、エコロジカル イノベーションを追求するのだと言うのだが、公害で環境が破壊されていた東ドイツでの自然環境の回復やグリーン党の活躍、ドイツ人の現実指向などが影響しているのだろう。

   日経の清水正巳論説委員が、アダム・スミスの神の手の導きに任せた市場原理での環境問題の解決について提示したのに対して、ヨーロッパの論者達が、ヨーロッパは、参加型民主主義が基本であって、労働組合の積極的参加など様々な関係者・機関等への配慮が必要だとパブリックの介入による秩序維持を説いていたのが面白かった。
   低炭素化社会の実現の為には、ヨーロッパだけいくら頑張ってもダメで、世界中の国々がこぞってグローバルベースで、地球環境の保護に当たらなければダメだと何度も強調していたのも印象的であった。

   私は、ブッシュになって極端に幼稚化してしまったアメリカに対して、イラク戦争での初期の独仏の強烈なアメリカ非難など以降の行動も含めて、今度の環境問題対応にしても、ヨーロッパの方がやはり文化文明の守護者であって、はるかに大人の対応をしていると思っている。
   私自身、アメリカで大学院教育を受けたので一宿一飯の恩義も感じており、アメリカの良さも痛いほど分かっているつもりだが、何でもアメリカ志向と言う日本の風潮には疑問を感じており、日本の見習うべきは、むしろ、ヨーロッパではないかと常々思っている。
   
コメント
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