熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

堺屋太一:官僚による日本のガラパゴス化を糾弾

2008年06月09日 | 政治・経済・社会
   日経ヴェリタスの「グローバル経済から考えるこれからの資産運用」セミナーで、激動の世界経済を熱っぽく語ったが、何時もながら、最後に、
   この難局に直面しながらも一切友好な手段を打てない日本の官僚機構の無能さと、自分達の利権を死守する為に、益々法令や規則ばかり作っている使命感と誇りを失った官僚機構が、日本をガラパゴス化して、世界の孤児にしていると糾弾した。
   官僚機構が、地方格差の解消など日本社会の革新を阻害していると言う見解を、先日も、中谷巌氏が論じていたが、竹中平蔵教授の激しい官僚批判を含めて、(御用学者は論外としても)、政府の中枢的な仕事に係わって来た識者達が異口同音に、官僚機構、特に、霞ヶ関が最大の抵抗勢力だとして糾弾する機会が多くなって来ているのに、危機感を感じざるを得ない。

   総ての官僚が反対したと言う国家公務員改革基本法について、意見書や法案など官僚が係わると自分に都合の良いように書くので、今回は、一切官僚の手を排除して自分たち委員で書いたと言い、福田総理の強力な英断(渡辺美行行革担当大臣と中川秀直氏の力にも触れた)で成立したのだと裏話を語っていた。
   竹中教授も骨太の方針の時も官僚抜きで自分たちで書いたと言っていたが、ビール・タクシーに乗るようなお役人には、任せられないと言うことであろうか。
   ところで、人気急落中の福田総理だが、この国家公務員改革基本法を一気に通した決断もそうだが、今日、日本記者クラブで、地球温暖化対策に対して、今秋から、排出権取引を試行し、環境税の導入を検討すると、経団連の向こうを張って、発表したが、中々捨てたものではないと思っている。

   ところで、堺屋先生の話だが、サブプライム問題、石油価格の高騰、食糧危機などのカレント・トピックスを例に引きながら、世界経済の現状を語った。
   面白かったのは、元のフビライ・カーンの時代に、ペーパー・マネーが初めて導入され80年間続いて頓挫してしまったのだが、1971年にニクソンが、金ドル兌換を廃止した段階でペーパー・マネーに突入したので、サブプライム問題は起こるべくして起こったと言う話であった。健全な融資も、拡大するにつれて、どんどん、不良な融資先に金が流れて行き、今回のサブプライムは、大数の法則で運用した所に問題があると言うのである。

   この10年間で起こった世界経済の大変革は、
   1、グローバル化
   2、証券化(Securitization)
   3、主観化 だと言う。
   主観化については、堺屋知価革命の根幹部分の展開だが、かっては、ものの価格は、そのものの価値や生産コストと連動していたが、今日の商品価値は、社会的な主観で決まる。同じ絹のネクタイで製造コストが同じでも、ブランド物のエルメスだと2万円を越すが、中国製だと2千円になると言う論理で、価格の不安定性が増し、投機資金が暗躍すると言うのである。
   
   興味深かったのは、世界貿易の変化論で、これまでは、同じ経済水準の国家間の間の貿易が主体の水平分業であったが、21世紀は、工程分業に変わってしまったと言うのである。
   ビジネスモデル、技術開発、デザイン、部品等の製造、組立、販売・流通、マーケティング、金融etc.、工程毎に、国際分業が行われるようになった。
   
   ここで問題は、日本がいまだに、今や開発途上国に移ってしまった最も付加価値の低い製造や組立と言ったものづくりに固守して産業政策が打たれていることで、それに、益々、外資導入や外国人労働者の移入規制を進めており、全く、世界の動きから逆行していると言うのである。

   堺屋氏は、現在の日本は、明治維新改革と同じ問題を抱えているとする。
   1、開国
   2、公務員改革(武士を廃止)
   3、廃藩置県――道州制の導入
   4、新貨幣、信用創造――通貨金融政策の改革
   5、軍事制度、教育改革
   特に教育改革については、どんな人間を創るのかと言う根本的な問題意識が最も大切だと言う。

   概ね堺屋理論に賛成だが、堺屋氏の講演を聞いていて面白いのは、やはり、知識の豊かさ故に、その度毎に、新鮮な話題で話の中身が展開していることである。
   多くの有名な学者や評論家の講演の殆どは、同じことの繰り返しか、少し中身を変えたくらいで、殆ど新鮮な展開は期待出来ないが、堺屋氏の話は、大体想像がつくとしても、講演の度毎に面白いし、同じ様に、博識で高度な理論を展開する大前研一氏の新しいトレンドに密着した講演と共に、楽しみに聞いている。
   余談だが、堺屋氏の後輩の元通産省高官の友人が堺屋氏を痛く嫌っているのだが、当然としても面白いと思っている。
   
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする