経営組織変革論のべナム・タブリージ教授が、近著「90日変革モデル Rapid Transformation : a 90-day plan for fast and effective change 」で、激動のポストモダン社会(ポストインターネット社会)において、今日の企業が生き抜くために如何に変革して行くべきか、自ら編み出した現在の社会で利用できる効果的な変革の法則や実践方法を説いている。
その中で、成功ケースとして、スティーブ・ジョブズのアップルのトランスフォーメーションを詳述しているのだが、僅かだが、ソニーと対比している箇所があり、興味深いので、その論点について考えてみたい。
変革への取り組みのうち成功したもの、失敗したものを、幅広くかつ徹底的に分析した結果、取り組みの成否を分ける重要な成功要因は、次の四つ、すなわち、包括性、統合性、迅速性、コミットメント(特に組織の上層部において)だったとして、この四つの視点から、ソニーとアップルの改革への対応を比較して、ソニーがアップルに出し抜かれた要因を説いている。
1999年以降のソニーの変革への取り組みは、日々のオペレーションの効率改善やコスト削減、新しい組織体制の導入に限られていて、純粋に内向きで、顧客の目には見えなかった。
ソニーの変革は、これと言った特徴もなく、ソニーの状況を良くするための断片的な企業改革に止まった。
説得力に欠けるリーダーシップに加え、切迫感が欠如していたことから、表面的なコスト削減に止まり結果として望んでいた効果は得られなかった。
アップルは、社内のオペレーションを合理化するだけではなく、1997年に新しい製品ライン戦略を実行し、ワクワクさせるような革新的な新製品の開発に注力した。
更に、印象的な一連の広告キャンペーンを展開し、顧客中心の取り組みによって、顧客の興味を再びかきたて、アップルのブランドイメージを復活させようと試みた。
再び返り咲いたジョブズのリーダーシップが、顧客や社員を鼓舞するのに十分で、この新鮮な展開がコミットメントを引き出し、変革を具体化するための必須要件を満たした。
社内に元々存在していた切迫感に加え、ジョブズの優れたリーダーシップや全体的な取り組みにより、ぶれのない戦略を立案でき、新しい顧客重視と言う戦略に重点が当てた。
タブリージは、ソニーのストリンガーについて記し、
2005年にCEOに成るまでは、出井に抑えられて直接的な権限がなく、リーダーシップのカリスマ性を欠いていたので、この状況は、変革を成功させるために必要なエネルギーを欠いた。
更に、ソニーの核とも言うべき工学的あるいは技術的なバックグラウンドがなかったので、新しくリーダーになったすぐは、実力を疑問視されていた。
として、ジョブズのカリスマ的リーダーシップと対比させて、ソニーの経営者とのその大きな落差は歴然としていると言う。
また、ビジネスウイーク誌に2003年のベスト経営者がアップルのジョブズで、ワースト経営者がソニーの出井であったのが、リーダーの能力差を示す何よりの証拠だと手厳しい。
スライウォツキーは、アップルの成功は、iPodを開発したビジネスモデルの勝利だとしており、ダブルベッド戦略を打てなかったソニーの戦略ミスが明暗を分けたとしているのだが、タブリージは、変革への取り組みのお粗末さからソニーの凋落を語っていて興味深い。
しかし、元々、ソニーの凋落は、私自身は、イノベーションを忘れたカナリヤの悲しさにあると思っており、この方面から、このブログでも、何度もソニーの経営について論じて来たが、結局は、大賀社長以降、トップ集団を含めて経営者にヒトを得なかったと言うことに尽きると思っている。
出井氏の舵取りは、更にソニーの迷走を加速しただけで、経営業績が極端に悪化してソニーショックを引き起こし、確か株価が30万円を割って最悪の事態に陥り、ストリンガー中鉢体制に移行した。
新体制になってから既に4年経つが、ソニーが変化したと言うハッキリした兆しは殆どない。
先週の日経ビジネスでソニー特集を組んでソニーの今日についてレポートしていたが、垂直生産方式を水平生産方式に切りかえるだとか、コスト削減の為にTVの生産方式を単純化するだとか、ソニー・ユナイテッドなどと言う至極当たり前の戦術をストリンガーCEOが声高に唱えなければならないとか、いまだに、迷走振りを露呈している状態である。
中鉢社長の唱える”革新的な技術を活かし、ヒット商品を創出し、お客様に感激と愉しみを提供する”などは夢の夢である。
念のためにと思って、ソニーの経営理念や戦略戦術など経営方針を知りたいと思って、ソニーのホームページを開いたが、目ぼしいものはなく、ストリンガーCEOの昨年のアニュアルレポートの挨拶文章が掲載されているだけで、更に、調べたら、経営方針説明会インターネット中継に行き当たった。
しかし、何のことはない2005年度ソニー経営方針説明会(2005.9.22)のビデオ録画なのである。
ところが、この説明会で、ストリンガーCEOが得々として真っ先に自慢して語ったのが、何のことはないPS3とウォークマンに如何に期待しているかと言うことである。
この二つとも、間髪を入れずに、ウォークマンはアップルのiPodに、PS3は任天堂のWii等にコテンパンに凌駕され軍門に下ってしまった製品であり、ソニーのトップが如何に脳天気な経営を行っているのが良く分かって非常に興味深い。
しかし、IRは勿論、PR,顧客重視の経営を進める為にも、ホームページの活用等ITデジタル技術を縦横無尽に駆使してブランドイメージ・アップに邁進しなければならない筈なのに、何故、5年前の時代遅れの経営方針説明会ビデオだけ残しておいて、最新のソニーの経営戦略と夢を語らないのであろうか。
スライウォツキーやタブリージが説くソニー凋落経営論よりも、それ以前のソニーの動脈硬化の方が問題なのかも知れない。
その中で、成功ケースとして、スティーブ・ジョブズのアップルのトランスフォーメーションを詳述しているのだが、僅かだが、ソニーと対比している箇所があり、興味深いので、その論点について考えてみたい。
変革への取り組みのうち成功したもの、失敗したものを、幅広くかつ徹底的に分析した結果、取り組みの成否を分ける重要な成功要因は、次の四つ、すなわち、包括性、統合性、迅速性、コミットメント(特に組織の上層部において)だったとして、この四つの視点から、ソニーとアップルの改革への対応を比較して、ソニーがアップルに出し抜かれた要因を説いている。
1999年以降のソニーの変革への取り組みは、日々のオペレーションの効率改善やコスト削減、新しい組織体制の導入に限られていて、純粋に内向きで、顧客の目には見えなかった。
ソニーの変革は、これと言った特徴もなく、ソニーの状況を良くするための断片的な企業改革に止まった。
説得力に欠けるリーダーシップに加え、切迫感が欠如していたことから、表面的なコスト削減に止まり結果として望んでいた効果は得られなかった。
アップルは、社内のオペレーションを合理化するだけではなく、1997年に新しい製品ライン戦略を実行し、ワクワクさせるような革新的な新製品の開発に注力した。
更に、印象的な一連の広告キャンペーンを展開し、顧客中心の取り組みによって、顧客の興味を再びかきたて、アップルのブランドイメージを復活させようと試みた。
再び返り咲いたジョブズのリーダーシップが、顧客や社員を鼓舞するのに十分で、この新鮮な展開がコミットメントを引き出し、変革を具体化するための必須要件を満たした。
社内に元々存在していた切迫感に加え、ジョブズの優れたリーダーシップや全体的な取り組みにより、ぶれのない戦略を立案でき、新しい顧客重視と言う戦略に重点が当てた。
タブリージは、ソニーのストリンガーについて記し、
2005年にCEOに成るまでは、出井に抑えられて直接的な権限がなく、リーダーシップのカリスマ性を欠いていたので、この状況は、変革を成功させるために必要なエネルギーを欠いた。
更に、ソニーの核とも言うべき工学的あるいは技術的なバックグラウンドがなかったので、新しくリーダーになったすぐは、実力を疑問視されていた。
として、ジョブズのカリスマ的リーダーシップと対比させて、ソニーの経営者とのその大きな落差は歴然としていると言う。
また、ビジネスウイーク誌に2003年のベスト経営者がアップルのジョブズで、ワースト経営者がソニーの出井であったのが、リーダーの能力差を示す何よりの証拠だと手厳しい。
スライウォツキーは、アップルの成功は、iPodを開発したビジネスモデルの勝利だとしており、ダブルベッド戦略を打てなかったソニーの戦略ミスが明暗を分けたとしているのだが、タブリージは、変革への取り組みのお粗末さからソニーの凋落を語っていて興味深い。
しかし、元々、ソニーの凋落は、私自身は、イノベーションを忘れたカナリヤの悲しさにあると思っており、この方面から、このブログでも、何度もソニーの経営について論じて来たが、結局は、大賀社長以降、トップ集団を含めて経営者にヒトを得なかったと言うことに尽きると思っている。
出井氏の舵取りは、更にソニーの迷走を加速しただけで、経営業績が極端に悪化してソニーショックを引き起こし、確か株価が30万円を割って最悪の事態に陥り、ストリンガー中鉢体制に移行した。
新体制になってから既に4年経つが、ソニーが変化したと言うハッキリした兆しは殆どない。
先週の日経ビジネスでソニー特集を組んでソニーの今日についてレポートしていたが、垂直生産方式を水平生産方式に切りかえるだとか、コスト削減の為にTVの生産方式を単純化するだとか、ソニー・ユナイテッドなどと言う至極当たり前の戦術をストリンガーCEOが声高に唱えなければならないとか、いまだに、迷走振りを露呈している状態である。
中鉢社長の唱える”革新的な技術を活かし、ヒット商品を創出し、お客様に感激と愉しみを提供する”などは夢の夢である。
念のためにと思って、ソニーの経営理念や戦略戦術など経営方針を知りたいと思って、ソニーのホームページを開いたが、目ぼしいものはなく、ストリンガーCEOの昨年のアニュアルレポートの挨拶文章が掲載されているだけで、更に、調べたら、経営方針説明会インターネット中継に行き当たった。
しかし、何のことはない2005年度ソニー経営方針説明会(2005.9.22)のビデオ録画なのである。
ところが、この説明会で、ストリンガーCEOが得々として真っ先に自慢して語ったのが、何のことはないPS3とウォークマンに如何に期待しているかと言うことである。
この二つとも、間髪を入れずに、ウォークマンはアップルのiPodに、PS3は任天堂のWii等にコテンパンに凌駕され軍門に下ってしまった製品であり、ソニーのトップが如何に脳天気な経営を行っているのが良く分かって非常に興味深い。
しかし、IRは勿論、PR,顧客重視の経営を進める為にも、ホームページの活用等ITデジタル技術を縦横無尽に駆使してブランドイメージ・アップに邁進しなければならない筈なのに、何故、5年前の時代遅れの経営方針説明会ビデオだけ残しておいて、最新のソニーの経営戦略と夢を語らないのであろうか。
スライウォツキーやタブリージが説くソニー凋落経営論よりも、それ以前のソニーの動脈硬化の方が問題なのかも知れない。