「顧客経験の共創とグローバル資源の利用」と言う企業環境を取り巻く大きな大潮流の変化を前に、企業が、イノベーションと価値創造を目指して、如何に、成長戦略を打つべきか、大胆に、切り込んだのが、この本「イノベーションの新時代 The New Age of Innovation」である。
前著の「価値共創への未来 The Future of Competition」と「ネクスト・マーケット The future at The Bottom of The Pyramid」を読んでおれば、プラハラード教授の理論展開はほぼ推測はつくが、その核心部分において、デジタル化によるICT技術の途轍もない進化が、経営革新の根幹を占めていることに鑑み、今回は、専門家のベンカト・カマスワミ教授が共著者として参加し、更に、理論の発展および精緻化を図っている。
まず、真っ先に理解すべきなのは、プラハラード教授の「顧客経験の共創とグローバル資源の利用」と言う時代認識で、その背景の核心部分は、次のとおり。
①(ICT革命を背景にした)価値創造における消費者との協力関係、価値共創の比重の高まり
②消費者との価値共創に必要な知識、技術、ヒト、モノ、カネをすべて持つ企業は1社としてなく、社外の様々な資源を利用する術を身につけること必須
③エマージング・マーケットがイノベーションの中心となり得る。
この背景には、ICT革命によってフラット化したグローバル・ワールドにおいて、企業が、激烈な競争時代を生き抜くためには、オープン化を志向しグローバルベースでの経営資源の最適化ミックスを実現すべく、消費者のみならず、あらゆる利害関係者とのコラボレーションと共に価値を共創して行く経営戦略の構築と、その遂行が必須であると言う脅迫観念にも近い確信がある。
プラハラード教授の理論展開で、重要な位置を占めているのは、インド・オリジンであることが幸いしたと言うべきか、
先の「ネクスト・マーケット」において、本来、見向きもされなかった筈の世界の底辺を占める最貧層50億人を「顧客」に変える「次世代マーケット経営戦略」に焦点を当てて、イノベーションとは一体何なのかを問いかけながら、イノベーションの新しい潮流を説いたところに、面目躍如としている。
今回の著書で、遅れを取っていたインド経済社会の現状を逆手にとって、ICT技術をフル活用しして、イノベーション・イノベーションの連続で、世界最先端の銀行業務を展開しているインドのICICI銀行の快進撃を活写している。
たった10年足らずの間のこのインドでの銀行業務の革新は、「顧客価値の共創とグローバル資源の利用」を踏み台にしながら躍進するイノベーションの潮流が、エマージング・マーケットで花開いていることを示していて非常に示唆に富む。
イノベーションと価値創造は、欧米の豊かな市場であろうと、バングラディッシュやインドの極貧層のマーケットであろうと同じだと言うのがプラハラード教授の見解だが、創造的破壊のためには、既存の価値と権威の集積であるエスタブリッシュメント国家や企業よりも、無から有を打ち立てる方が、この激動の時代には適しているのかも知れない。
クリステンセンが、イノベーション企業の凋落を説いて久しいが、ソニーがトランジスターを引っさげて、真空管工場に見切りを着けられなかった支配的電機会社を尻目にして快進撃したのも、もう、昔の話。
しかし、「挑戦と応戦」理論で、辺境から文明が移動・推移して行く歴史発展論を展開した偉大なアーノルド・トインビーを髣髴とさせて面白い。
プラハラードのもうひとつのイノベーション論の卓越性は、イノベーションを狭い意味での技術革新と捉えずに、シュンペーター本来のイノベーション論に回帰させて、ピーター・ドラッカー経営学の核心に引き戻して論じていることである。
既に、企業を取り巻く経営環境そのものが、プロダクト・イノベーションとプロセス・イノベーション、モノづくりとサービス、ハードウエアとソフトウエアなどの区別や敷居を無意味にしてしまっており、今や、如何なる手法を取ろうと、如何にして経営革新によって価値創造を実現するかが肝心であると言う認識である。(摺り合わせに強いとする日本のモノづくり論も、古くなったのでは?)
プラハラード教授のこの本の主要部分は、
顧客経験の共創とグローバル資源の利用による価値創造を目指して、業務プロセスを梃子にして、消費者と経営資源とをうまく橋渡しして、効率性と柔軟性を同時に実現することが、競争優位の源泉だとして、
業務プロセスの向上、イノベーションのひらめきへの分析、ITの活用、組織のレガシーへの対応、人材育成、経営者の課題など詳細に渡って、新時代の企業のイノベーション戦略を説いていることである。
中でも、最も重視している業務プロセスについては、事業のあらゆる面にデジタル化の波が押し寄せているため、事業は例外なく「eビジネス」と呼ぶべき状態になっていて、業務プロセスは、すべてICTの力を借りて成り立っていると強調しており、
核心部分である「顧客経験の共創とグローバル資源の利用」でのICTの果たす役割の重要性を考えれば、企業の有効なICT戦略の構築が、イノベーション戦略の中枢要件であると言うことである。
日本では、ICTに弱い高齢経営者が、経営のICT化に抵抗してシステム全体として機能していない会社が多いと言うことが指摘されているが、これなどはプラハラード経営学以前の問題で、何をか況やと言うことなのかもしれない。
前著の「価値共創への未来 The Future of Competition」と「ネクスト・マーケット The future at The Bottom of The Pyramid」を読んでおれば、プラハラード教授の理論展開はほぼ推測はつくが、その核心部分において、デジタル化によるICT技術の途轍もない進化が、経営革新の根幹を占めていることに鑑み、今回は、専門家のベンカト・カマスワミ教授が共著者として参加し、更に、理論の発展および精緻化を図っている。
まず、真っ先に理解すべきなのは、プラハラード教授の「顧客経験の共創とグローバル資源の利用」と言う時代認識で、その背景の核心部分は、次のとおり。
①(ICT革命を背景にした)価値創造における消費者との協力関係、価値共創の比重の高まり
②消費者との価値共創に必要な知識、技術、ヒト、モノ、カネをすべて持つ企業は1社としてなく、社外の様々な資源を利用する術を身につけること必須
③エマージング・マーケットがイノベーションの中心となり得る。
この背景には、ICT革命によってフラット化したグローバル・ワールドにおいて、企業が、激烈な競争時代を生き抜くためには、オープン化を志向しグローバルベースでの経営資源の最適化ミックスを実現すべく、消費者のみならず、あらゆる利害関係者とのコラボレーションと共に価値を共創して行く経営戦略の構築と、その遂行が必須であると言う脅迫観念にも近い確信がある。
プラハラード教授の理論展開で、重要な位置を占めているのは、インド・オリジンであることが幸いしたと言うべきか、
先の「ネクスト・マーケット」において、本来、見向きもされなかった筈の世界の底辺を占める最貧層50億人を「顧客」に変える「次世代マーケット経営戦略」に焦点を当てて、イノベーションとは一体何なのかを問いかけながら、イノベーションの新しい潮流を説いたところに、面目躍如としている。
今回の著書で、遅れを取っていたインド経済社会の現状を逆手にとって、ICT技術をフル活用しして、イノベーション・イノベーションの連続で、世界最先端の銀行業務を展開しているインドのICICI銀行の快進撃を活写している。
たった10年足らずの間のこのインドでの銀行業務の革新は、「顧客価値の共創とグローバル資源の利用」を踏み台にしながら躍進するイノベーションの潮流が、エマージング・マーケットで花開いていることを示していて非常に示唆に富む。
イノベーションと価値創造は、欧米の豊かな市場であろうと、バングラディッシュやインドの極貧層のマーケットであろうと同じだと言うのがプラハラード教授の見解だが、創造的破壊のためには、既存の価値と権威の集積であるエスタブリッシュメント国家や企業よりも、無から有を打ち立てる方が、この激動の時代には適しているのかも知れない。
クリステンセンが、イノベーション企業の凋落を説いて久しいが、ソニーがトランジスターを引っさげて、真空管工場に見切りを着けられなかった支配的電機会社を尻目にして快進撃したのも、もう、昔の話。
しかし、「挑戦と応戦」理論で、辺境から文明が移動・推移して行く歴史発展論を展開した偉大なアーノルド・トインビーを髣髴とさせて面白い。
プラハラードのもうひとつのイノベーション論の卓越性は、イノベーションを狭い意味での技術革新と捉えずに、シュンペーター本来のイノベーション論に回帰させて、ピーター・ドラッカー経営学の核心に引き戻して論じていることである。
既に、企業を取り巻く経営環境そのものが、プロダクト・イノベーションとプロセス・イノベーション、モノづくりとサービス、ハードウエアとソフトウエアなどの区別や敷居を無意味にしてしまっており、今や、如何なる手法を取ろうと、如何にして経営革新によって価値創造を実現するかが肝心であると言う認識である。(摺り合わせに強いとする日本のモノづくり論も、古くなったのでは?)
プラハラード教授のこの本の主要部分は、
顧客経験の共創とグローバル資源の利用による価値創造を目指して、業務プロセスを梃子にして、消費者と経営資源とをうまく橋渡しして、効率性と柔軟性を同時に実現することが、競争優位の源泉だとして、
業務プロセスの向上、イノベーションのひらめきへの分析、ITの活用、組織のレガシーへの対応、人材育成、経営者の課題など詳細に渡って、新時代の企業のイノベーション戦略を説いていることである。
中でも、最も重視している業務プロセスについては、事業のあらゆる面にデジタル化の波が押し寄せているため、事業は例外なく「eビジネス」と呼ぶべき状態になっていて、業務プロセスは、すべてICTの力を借りて成り立っていると強調しており、
核心部分である「顧客経験の共創とグローバル資源の利用」でのICTの果たす役割の重要性を考えれば、企業の有効なICT戦略の構築が、イノベーション戦略の中枢要件であると言うことである。
日本では、ICTに弱い高齢経営者が、経営のICT化に抵抗してシステム全体として機能していない会社が多いと言うことが指摘されているが、これなどはプラハラード経営学以前の問題で、何をか況やと言うことなのかもしれない。