熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

「読書習慣はない」日本人は6割  と言うのだが

2018年10月07日 | 生活随想・趣味
   インターネットを叩いていたら、リアルライブの記事「「読書習慣はない」日本人は6割 ある発想の転換で、誰しも本好きになる?」に気が付いた。
   読書好きの私にとっては、見逃せない記事なので、読んでみたが、記者自身が、読書人ではないようで、本にどのように対峙しているのか、その姿勢さえ見えない。
   結語が、「いずれにしろ固定概念を外し、本を“娯楽の1つ”と感じることが大切だということだろう。柳沢氏が言うように漫画でも攻略本でも、まずは本を手に取ってみれば新しい世界が広がるのではないだろうか。」と言う一事からも、その軽さを感じざるを得ない。
   読書を娯楽と取ることについては、娯楽が何を意味するのかにもよるのだが、まず、本に対する問題意識の欠如と言うべきであろう。
   いずれにしろ、漫画でもゲーム本でもどんな本でも良いから、本を手に取る機会があれば、世界が広がると言うのだが、ダンテの「神曲」やトインビーの「歴史の研究」に、どうして挑戦できるのであろうか。

   開成中学・高校の柳沢幸雄校長の言を引用して、大切なのは「楽しんで読んでいるのか」ということであり、きっかけは文学作品でなくとも「漫画だって、ゲームの攻略本だって立派な読書」だと持論を述べている。つまり、漫画の読者も立派に読書をしているということである。と言っているのだが、これは、あくまできっかけであって、その後に、読書習慣がつくかどうかが問題なのである。
   また、出口治明氏が、「基本的にベストセラーはトンデモ本」「5年後に書店に残っている本はほとんどない」という点と、「どう考えても全部嘘」という実用書が多い点を挙げ、だからこそ“売れる”のだと語ったと言っているのだが、どんな本のことを言っているのか、私の読んでいる経済学や経営学の専門書に関する限り、そんなことは殆ど有り得ないので、暴言も甚だしい。
   
   何千冊もの本に挑戦して、読書については、このブログで随分書いてきたので、蛇足は避けるが、確かに、読書が私の人生そのものだと言えども、私にとっても、読書は娯楽であったかも知れないと思うこともある。 
   しかし、読書は、私自身では、到底到達し得ないような代理経験の手段であって、真実を知りたい、何が善なのか知りたい、美しいものに巡り合いたい、そんな思いで、一冊一冊本に対峙してきた。
   それは、何も読書には限ることはなく、あっちこっち旅することであっても、劇場やオペラハウスで観劇することであっても、先達の素晴らしい話を聞くことでも、人を愛することであっても、何でもよいと思うのだが、人生の喜びの一つは、真善美の追求であって、少しでも、その素晴らしさに触れる機会を得て、幸せを感じることが出来れば、これ程幸運なことはないと思っており、読書は、そのための貴重な手段の一つなのである。

   私自身は、読書習慣をつけるためには、鉄は熱いうちに鍛えろで、小中学校で、カリキュラムに組み込んで、しっかりと教育訓練することだと思っている。
   イギリスでは、スピーチ能力の涵養が重要だと考えられていて、しっかりと授業に組み込まれているのだが、あの要領である。
   調査結果で、「読書習慣はない」と回答したのは60.6%とかで、その理由として、「忙しい」が40.7%、「読みたいと思う本がない」が22.4%、「他の趣味の方が面白い」21.2%と言うことだが、子供の時に読書習慣を身に着け、その魅力を感じさせれば、確実に読書量は増える筈で、たとえ、xyや文法などの授業時間を割いてでも、はるかに、教育効果はアップすると思う。
  
   以前に、ジェフリー・サックスが、「世界を救う処方箋」の「注意散漫な社会」と言う章で、現代人の読書離れが、無知の蔓延の元凶だと、痛烈に批判している。のを紹介した。
   若者の間では、読書を楽しむ習慣が消え、書籍の購入は10年ほど前から急速に減り始め、アメリカ人が読書をしなくなり始めて、基礎的な知識を持たない人が増えてきた。特に気候変動のような政治論争の的になっているような問題について、科学的な事実を知らない人が多すぎる。読書力も急激に落ち込んでいる。新たな「情報の時代」と言われる今、実は国家の重大事と言う時に、市民として私たちも危機に直面している時に、国民の間で、基礎知識の崩壊が起こっている。と言うのである。

   また、このブログで「本を読まない日本の大人、特に四国人」と言う記事で、月に一冊も本を読まない大人が、全国平均38%もいて、四国は最悪でダントツに悪く、60%もの人が本とは全く縁がないと言うことを書いた。
   グーテンベルグの偉業によって読書文化が、一気に人知をレベルアップして人類の歴史をアウフヘーベンしたが、今に至って、日本人の読書離れは、間違いなく、民度の低下を惹起して、大袈裟に言えば、政治経済社会の健全性を根底から揺さぶる筈である。
   ネットショッピングで、百貨店をはじめリアルショップが危機的な状態に陥っているのだが、インターネットで、e-bookを読めばよいと言う次元の話とは違うと思っているのだが、どうであろうか。
  
   
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする