熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

映画・・・「散り椿」

2018年10月10日 | 映画
   久しぶりの映画である。
   隣の藤沢の辻堂であるから、観劇に東京に行くより、楽なので助かる。

   瓜生新兵衛(岡田准一)は、藩の不祥事を追及し故郷を逐われ妻の篠(麻生久美子)と出奔して、地蔵院に身を寄せていたが、病気の篠は、故郷の散り椿がもう一度見たいと呟きながら、亡くなった後、榊原采女(西島秀俊)を助けるために夫に故郷に戻ってほしいと頼んで逝く。妻の言う通り18年ぶりで故郷の扇野藩に戻ったところから、家老石田玄蕃(奥田瑛二)たちの悪事の真相が明らかになり始めて、藩内では再び抗争が巻き起こる。友人だった榊原采女と新兵衛は対決するも、真実を知り、家老と対決する。

   この映画は、時代劇映画にしては、オールロケで、素晴らしい日本の国土自然を舞台にして撮った映画だと言う。
   監督にインタビューで、「美しい時代劇を作りたい」と言っていましたねと聞かれて、「「美しい時代劇」というのは、単に映像が綺麗という意味ではないんです。人の心の美しさも表現したいと思いました。確かに映像的な狙いもあります。」と応えている。
   「背景に残雪の日本アルプスを見せたいと思って撮影時期を考えました。坂下家の庭先に見える竹藪も自生しているものの他に竹を足して、より美しい風景を狙っています。」とも言っているのだが、美しいだけではなく、風景が息づいていて、自然のかすかな鼓動さえ聞こえてくるのだが、丁度、中国人が愛でる13夜の月のように、紅葉にしろ錦に輝く秋色ではなく何処かくすんだ風景で、たまらなく感興をそそる。

   それに、作品の柱がラブロマンスだと言うのだが、冒頭の新兵衛が縁側に足を開いて座ったところに、結核で死期を迎えた妻の篠がもたれかかって最期の願いを吐露するシーンや、家の前の竹藪で剣の稽古を終えて井戸端に来ると、里美(黒木華)が手ぬぐいを絞って、汗を拭こうとする新兵衛に手渡すシーンや、去って行く新兵衛を万感胸に秘めて里美が見送るラストシーンなど、詩情豊かで感動的であり、麻生久美子も黒木華も実に魅力的で美しい。
   伏線として、篠が、采女と篠の婚姻話を采女の義母榊原滋野(富司純子)が反対して破談となり、新兵衛の妻になったことによる両者の思いと心のねじれが、二人を対決させるのだが、采女と篠の交わした手紙で真相が明かされて、篠の思いと真実が見えてくる。

   葉室 麟の原作「散り椿」が素晴らしいのであろうが、実に感動的な凄い映画である。

   キャストは次の通りだが、非常に適役で、素晴らしい演技を披露している。
瓜生新兵衛 - 岡田准一
榊原采女 - 西島秀俊
坂下里美 - 黒木華
坂下藤吾 - 池松壮亮
瓜生篠 - 麻生久美子
篠原三右衛門 - 緒形直人
宇野十蔵 - 新井浩文
平山十五郎 - 柳楽優弥
篠原美鈴 - 芳根京子
坂下源之進 - 駿河太郎
千賀谷政家 - 渡辺大
田中屋惣兵衛 - 石橋蓮司
榊原滋野 - 富司純子
石田玄蕃 - 奥田瑛二
コメント
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