地味鉄庵

鉄道趣味の果てしなく深い森の中にひっそりと (?) 佇む庵のようなブログです。

濃尾三州鉄遊覧 (8) 近鉄あおぞらⅡ

2012-09-14 00:00:00 | 大手民鉄 (近鉄)


 トロッコ車両から超豪華リゾート列車まで、今や本朝には星の数ほど (?) 観光向けに特化した車両がありますが、だいたいそのような、通常の往来とは切り離されて非日常へと向かうための車両というのは、経済が衣食住を何とか満足させるために回っている段階から一歩飛躍したときに初めて生まれるものであり、その嚆矢とも呼ぶべき存在のひとつは、高度成長へと突き進む昭和30年代に登場した修学旅行用車両ではないか?と思います。勿論戦前、そして戦後復興期の段階で既に一部の大手私鉄が観光特急の類を走らせているわけですが、それに乗るのはあくまでごく一部の有産階級の特権に過ぎなかったことを考えれば、一般人でもちょっと頑張れば享受できるプチ・デラックスな新性能急行電車の類は変化の大きな象徴ですし、その技術をさらに義務教育の修学旅行用車両に投じるということ自体、「国民みな観光」の時代を高らかに告げるものだったのでしょう。
 もっとも最近は、クルマ社会化と格差拡大という、それぞれ異なる変数ゆえに、列車で観光するという経験を持たない人々が増えつつあるような気配が強く感じられ、鉄道大国日本の国民統合上由々しい問題ではないか……と思うのは私だけでしょうか? (誰もそんな屁理屈考えないか ^^;)



 そんな、ある意味で幸せな時代を象徴する修学旅行用車両といえば……関東人のオッサンにとってまず思い浮かぶのは国鉄155・159・167系であり、私が修学旅行する頃とちょうど前後して田町所属の155系は廃車となってしまいましたが (とゆーか……小学校の修学旅行はバスで、中高は新幹線。苦笑)、臨時の急行「伊豆」に充当された155系には幼稚園児の頃に乗ったことがありまして、あの独特の……荷物棚が大きな空間を占める車内は、非冷房であることもあって非常に暑苦しい印象だったのを幼心に覚えております (笑)。伊豆急下田駅にて、完全自由席臨時急行の着席整理券 (1枚50~100円?) を売っていたのも懐かしい……(遠い目)。
 というわけで、後に近鉄が「あおぞら号」なる2階建ての修学旅行専用車両を用意していることを知ったときの衝撃といったら……。さすが赤字で潰れる国鉄とは違い、ビスタカーを走らせている近鉄というのは偉大な存在なのだということを中学生ゴコロに思い知ったのでした。そこで、中3の修学旅行で「京都~奈良間を近鉄で移動する」と知ったとき、「ひょっとしてあおぞら号??」と期待したのですが……何ということはなく、やって来たのは800系で超文句タラタラだったのでした……(今や800系に乗っただけでも最高に自慢出来る話だというのに、馬鹿ですな)。
 かくして、関東人にとっては驚天動地の2階建て修学旅行車両・20100系はついに乗車すること能わず、1989年に18200系の「あおぞらⅡ」にバトンタッチして廃車となり、さらに細身な「あおぞらⅡ」も12200系改め15200系の「あおぞらⅡ (実質的にはⅢ?)」となって今日に至っています。去る4月、名古屋近辺での用事のついでに中京圏で大撮り鉄合戦を展開した際には、用事の前の朝練と称して近鉄名古屋線を訪れたのですが、黄金あたりで偶然すれ違った「あおぞらⅡ」がすぐに名古屋から折り返して来て、大いに慌てつつも何とか連写! そして……デジカメのモニタで撮れ具合を確認しながら、そんな満たされない「修学旅行用車両への思慕」を思い出し、ちょっぴり感傷的な気分に浸ったのでした (今さら乗りたいとは全く思いませんが。笑)。