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ミステリ感想-『少女』湊かなえ

2009年03月02日 | ミステリ感想
~あらすじ~
高2の夏休み前、由紀と敦子は転入生の紫織から、かつて親友の自殺を目にしたという話を聞く。
その告白に魅せられた二人の胸に「人が死ぬ瞬間を見たい」という思いが浮かぶ。
由紀は病院へボランティアに行き、重病の少年の死を、敦子は老人ホームで手伝いをし、入居者の死を目撃しようと……。


~感想~
デビュー作『告白』がフロックではないことを証明した一作。
倫理的に一本ネジが外れている登場人物たちの織り成すイヤなお話というスタイルは変わらないが、イヤさに焦点を絞った前作とは異なり、騙りに焦点を絞った構成が光る。
枠組み自体はいたって普通の青春物語でありながら、一本軸をずらすことで、くり返し登場するキーワードの通り、収まるべきところにぴたりと収まる、ひどく後味の悪い、だがすごく爽快な結末を導く手腕はさすがといったところ。
『告白』よりもひとにおすすめしやすい、よくできた作品である。

どうでもいいが握力3キロの由紀は竹刀も本もカレードリアも持てないことにされているが、1キロあれば六法全書くらいは軽く持てることは付記しておこう。
握力なんて飾りです。偉い人にはそれがわからんのです。


09.1.30
評価:★★★★ 8
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