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ミステリ感想-『トーキョー・プリズン』柳広司

2009年03月12日 | ミステリ感想
~あらすじ~
戦時中に消息を絶った知人の情報を得るため巣鴨プリズンを訪れた私立探偵のフェアフィールドは、調査の交換条件として、囚人・貴島悟の記憶を取り戻す任務を命じられる。
捕虜虐殺の容疑で拘留されている貴島は、戦争中の記憶を失っていた。
フェアフィールドは貴島の相棒役を務めながら、プリズン内で発生した不可解な服毒死事件の謎を追う。


~感想~
偉人シリーズから離れた一作……はまたも個人的にハズレ。
氏の作風はきわめてオーソドックスで、「ジョーカー・ゲーム」を見てもわかるとおり、意外なトリックも論理の鋭さも発想の飛躍も薄い。
いつもはそれを偉人伝で覆い、奇矯なキャラで物語をひっぱり、史実のエピソードと事件を絡ませる豪腕で補うのだが、そうした装飾を失うと、残るのは当たり前の人物と当たり前の舞台に、いかにもありそうなストーリー展開と裏切りのない結末という平板な物語だけ。
おそらく自身も弱点をわきまえ、偉人伝に活路を見出しているのだろう。なんせ「百万のマルコ」にいたっては、「頭の体操」からそのままトリックを拝借し、なくてもいいようなマルコ伝を付け加え、それでよしとしているのだから。(でも面白いから困る)
個人的には偉人伝から離れた作品はもういいかな~。


09.2.16
評価:★★☆ 5
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