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ミステリ感想-『空想オルガン』初野晴

2010年11月09日 | ミステリ感想
~収録作品~
ジャバウォックの鑑札
ヴァナキュラー・モダニズム
十の秘密
空想オルガン


~感想~
ハルチカシリーズ(というらしい)第三弾。
ついに大会が始まり、物語はその進行に沿ってくり広げられる。
これまでは一般的ではない物理ネタをトリックに据えてきたシリーズだが、今回はほぼ封印し、「本格トリック」と呼んで差し支えない大ネタをいくつも放り込んでくれた。
白眉は『ヴァナキュラー・モダニズム』で、館ミステリさながらの一発ネタで度肝を抜いてくれる。
そしてここまで、個々の短編がストーリーの進行に沿って描かれている面で、連作短編集として成立していたのを、いかにも「本格ミステリした」トリックまで潜ませ……と、あまりネタを割っては申し訳ない。
冴えに冴え渡るテンポの良い会話や、濃いキャラ同士のやりとりを素直に楽しみ、驚かされるも良し。トリックを期待して読み進めて、期待通りの満足感を得ても良し、のすばらしい作品である。
シリーズ中でも最高峰というだけに留まらず、2010年を代表する一作であることは疑いない。


10.11.5
評価:★★★★☆ 9
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