小金沢ライブラリー

ミステリ感想以外はサイトへ移行しました

ミステリ感想-『ドゥルシネーアの休日』詠坂雄二

2010年11月28日 | ミステリ感想
~あらすじ~
タンポポは主張している。自分が四人を斬殺したことを。そして、凶器を変えて犯行を続けることを。
十年前の無差別殺人事件の模倣犯を追う雪見刑事。全寮制女子校の聖堂で祈り続ける山村朝里。死地をもいとわず数々の難事件と対峙してきた藍川慎司。
警察小説×学園小説×活劇小説=???


~感想~
クセモノ作家による初のシリーズ(?)作品。シリーズ(?)と言っても時系列が『遠海事件』の後で、探偵が同じというだけである。「それなら立派にシリーズ作品じゃねーの?」と思われるかも知れないが、単純にそうとは行かないのがこの作者のひねくれたところ。
かの厨二病ミステリ『リロ・グラ・シスタ』に巻き戻ったような厨二病ぎみの(流石にあれほどではないが)文体で、前半こそ刑事たちの地道な捜査を描くが、話が進むにつれ、現実離れした人物たちが、浮世離れした会話を交わし、ねじれた結末を迎える。
探偵の不在。ミッシングリンク。ワトソンの奮闘。意外な動機。盲点にいた犯人。探偵の帰還、と事象だけ追えば普通のミステリなのに、何から何まで一筋縄では行かない。
なんといっても結末のねじれ具合が最高で、「戻り川心中から彩紋家事件……ッ」と唸った。万が一見当がついたら申し訳ありません。
寡作のため年に一回のお楽しみになりつつある詠坂作品。今回もごちそうさまでした。


10.11.26
評価:★★★☆ 7
コメント