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ミステリ感想-『謎解きはディナーのあとで』東川篤哉

2010年11月27日 | ミステリ感想
~収録作品~
「失礼ながら、お嬢様の目は節穴でございますか?」令嬢刑事と毒舌執事が難事件に挑戦する。

殺人現場では靴をお脱ぎください
殺しのワインはいかがでしょう
綺麗な薔薇には殺意がございます
花嫁は密室の中でございます
二股にはお気をつけください
死者からの伝言をどうぞ


~感想~
くだらないギャグを煙幕にして、鋭いトリックを仕掛ける気鋭の作者による初の短篇集。
あれだけ滑っていたギャグも、筆がこなれたのかこちらの目が慣れたのか、寒い思いをすることはなくなった。
とはいえ身分を隠したお嬢様デカと毒舌執事のやりとりは、ズッコケ探偵トリオやお調子者高校生トリオの暴走ぶりと比べるとずいぶん控えめなのも確か。ギャグが滑ることは取り柄でもなんでもないので、控えめなのは結構なのだが、にぎやかさに欠けると思えてしまうのは、読者の身勝手な要望だろう。

作品の質は非常に高く、解決前に手がかりが出そろい、執事が毒を吐いたところで、やろうと思えば挑戦状を挟めるほどフェアプレイに徹している。その分、贅沢な物言いなのだが、フェアなゆえに地味な印象を受けてしまう。
くり返すが個々の作品の水準は高く「二股にはお気をつけください」など、ある一つの要素を軸に据えることで、謎と伏線と真相が絡みあい、不可解な事件の様相に一本の道筋を付ける、ロジックマニアにはたまらない逸品である。

それにしてもこんなロジックとフェアプレイにこだわったガチガチの本格ミステリを、全国の書店員サマ(笑)が帯いっぱいに偏執的に褒め称えるとは思えないんだけども。
さらに「執事が安楽椅子探偵になった日本初のミステリー」などと題材からして麻耶雄嵩の『貴族探偵』とかぶっているのにどの口が言うのか。
早くこの書店員マンセーの風潮、嘘・大げさ・まぎらわしい宣伝はやめてくれないものか出版社サマは。


10.11.25
評価:★★★ 6
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