~あらすじ~
世界で唯一の人間のヒトデナシ・無貌は変容しつつあった。
顔を奪われた仮面の探偵は無貌を追い、探偵の妻・遥は無貌を殺そうとする。
無貌が創り出そうとする楽園で待つのは希望か、絶望か?
~感想~
シリーズ完結編。
探偵譚としては二作前の「探偵の証」で完結し、シリーズ全体の謎は前作「奪われた顔」で明かされており、本作は無貌伝という物語を終わらせるためのものに過ぎない。
したがって鋭いトリックも意外な展開もほとんどなく、収まるべきところへ静かに収まっていくだけの話なのだが、まず驚かされるのはその薄さ。最終巻でありながらなんと200ページ足らずである。
まったくなんの他意もないのだが「根こそぎラジカル!」と叫びたくなるほどの薄さにビル・ゲイツもびっくりだ。
作者自身にも予想外だったらしい「探偵の証」の結末があまり活かされていなかったり、終盤などむしろページ数が足りなくて瀕死のはずのあの人がマシンガントークを披露する羽目になっているが、それはともかくデビュー作から続くシリーズを、無駄に長大化させることなく最後までこれだけ冷静に描き上げたのは賞賛すべきだろう。
(↓以下ネタバレ↓)
そして一番驚かされるのは仮面の探偵の「何もしていなさ」だ。もう本当に何もしていない。
「夢境ホテルの午睡」のラストで名探偵史に残るような超カッコイイ宣戦布告をしておきながら、終わってみればこちらも名探偵史に残るくらい何もしていない。貴族探偵のほうがよっぽど能動的に動いている。
無貌伝の探偵役はあくまで古村望であり、仮面の探偵はせいぜい狂言回しに過ぎず、彼にできることは「奪われた顔」でやった種明かしくらいのもので、探偵不在の最終巻がミステリでは無くなったのは必然なのかもしれない。
ともあれ稀有のシリーズは幕を閉じた。外伝や続編も余裕で作れそうだが、やはり次は作者の別シリーズやノンシリーズを読んでみたい。
再始動が心から楽しみである。
14.11.15
評価:★★★ 6
世界で唯一の人間のヒトデナシ・無貌は変容しつつあった。
顔を奪われた仮面の探偵は無貌を追い、探偵の妻・遥は無貌を殺そうとする。
無貌が創り出そうとする楽園で待つのは希望か、絶望か?
~感想~
シリーズ完結編。
探偵譚としては二作前の「探偵の証」で完結し、シリーズ全体の謎は前作「奪われた顔」で明かされており、本作は無貌伝という物語を終わらせるためのものに過ぎない。
したがって鋭いトリックも意外な展開もほとんどなく、収まるべきところへ静かに収まっていくだけの話なのだが、まず驚かされるのはその薄さ。最終巻でありながらなんと200ページ足らずである。
まったくなんの他意もないのだが「根こそぎラジカル!」と叫びたくなるほどの薄さにビル・ゲイツもびっくりだ。
作者自身にも予想外だったらしい「探偵の証」の結末があまり活かされていなかったり、終盤などむしろページ数が足りなくて瀕死のはずのあの人がマシンガントークを披露する羽目になっているが、それはともかくデビュー作から続くシリーズを、無駄に長大化させることなく最後までこれだけ冷静に描き上げたのは賞賛すべきだろう。
(↓以下ネタバレ↓)
そして一番驚かされるのは仮面の探偵の「何もしていなさ」だ。もう本当に何もしていない。
「夢境ホテルの午睡」のラストで名探偵史に残るような超カッコイイ宣戦布告をしておきながら、終わってみればこちらも名探偵史に残るくらい何もしていない。貴族探偵のほうがよっぽど能動的に動いている。
無貌伝の探偵役はあくまで古村望であり、仮面の探偵はせいぜい狂言回しに過ぎず、彼にできることは「奪われた顔」でやった種明かしくらいのもので、探偵不在の最終巻がミステリでは無くなったのは必然なのかもしれない。
ともあれ稀有のシリーズは幕を閉じた。外伝や続編も余裕で作れそうだが、やはり次は作者の別シリーズやノンシリーズを読んでみたい。
再始動が心から楽しみである。
14.11.15
評価:★★★ 6