~あらすじ~
動物全般に感染するウィルスによって肉食が忌避された近未来。日本は食肉としてクローン人間の培養を認めた。
頭部は切り落として各家庭に配達されるはずが、「食人法」を制定させた政治家のもとに、生首が届けられた。
14年横溝正史ミステリ大賞の最終候補に残り、物議をかもした問題作がついに刊行!
~感想~
世間的には元芸人が獲ったらしい大賞が話題になっているが、ミステリマニアの間では完全に逆で、最終候補から一発逆転で刊行されたこちらのほうが話題の的。
評判にたがわぬ年間ベスト級の問題作である。
まず設定だけ見ればここからユーモアミステリが始まりそうだが、あにはからんや大真面目に物語が展開してしまう。
登場人物も金髪の民間探偵、多重人格を気取る中二病患者、パンクをこよなく愛する風俗嬢と悪い意味で多士済々、作者は平成生まれの24歳と来れば手に取るのも躊躇するところだが、一皮むけば多重人格ならぬ多重解決と鋭い論理をあわせもったド本格ミステリなので安心して頂きたい。
カニバリズムを扱いながらも「食人」という厄介な題材はすでに日常へ溶け込んでおり、実はあまりその方面で深い議論はされず、一歩間違えばグロい描写も淡々と描かれるので、ほとんど気にならない。
話の肝となるのはやはり鋭い論理性で、生首配達事件について入れ替わり立ち替わり推理が行われるが、そのどれもが一定以上の説得力を持っており、特に終盤で披露される推理は、論理も伏線も見事にはまり、意味ありげなタイトルも絡んで膝を打たせておきながら……そこからさらに物語は二転三転し、まったく思いもよらない着地を決められて茫然自失となった。
いろいろと粗い点も散見されるものの、多重解決を用いた作品の中では、今まで読んだ中でも最も優れているかもしれない、とまで思ったり。(推理の枠組みはそのままに真相だけが次々と変遷する三津田信三を別とすればだが)
おそらくこんな尖った題材をわざわざ用いずとも傑作を書けそうな作者だが、次回作は何を出してくれるのか心の底から楽しみで仕方がない。続編とは行かなくても「食人法」の存在する設定は引き継ぎそうな気が。
14.11.21
評価:★★★★☆ 9
動物全般に感染するウィルスによって肉食が忌避された近未来。日本は食肉としてクローン人間の培養を認めた。
頭部は切り落として各家庭に配達されるはずが、「食人法」を制定させた政治家のもとに、生首が届けられた。
14年横溝正史ミステリ大賞の最終候補に残り、物議をかもした問題作がついに刊行!
~感想~
世間的には元芸人が獲ったらしい大賞が話題になっているが、ミステリマニアの間では完全に逆で、最終候補から一発逆転で刊行されたこちらのほうが話題の的。
評判にたがわぬ年間ベスト級の問題作である。
まず設定だけ見ればここからユーモアミステリが始まりそうだが、あにはからんや大真面目に物語が展開してしまう。
登場人物も金髪の民間探偵、多重人格を気取る中二病患者、パンクをこよなく愛する風俗嬢と悪い意味で多士済々、作者は平成生まれの24歳と来れば手に取るのも躊躇するところだが、一皮むけば多重人格ならぬ多重解決と鋭い論理をあわせもったド本格ミステリなので安心して頂きたい。
カニバリズムを扱いながらも「食人」という厄介な題材はすでに日常へ溶け込んでおり、実はあまりその方面で深い議論はされず、一歩間違えばグロい描写も淡々と描かれるので、ほとんど気にならない。
話の肝となるのはやはり鋭い論理性で、生首配達事件について入れ替わり立ち替わり推理が行われるが、そのどれもが一定以上の説得力を持っており、特に終盤で披露される推理は、論理も伏線も見事にはまり、意味ありげなタイトルも絡んで膝を打たせておきながら……そこからさらに物語は二転三転し、まったく思いもよらない着地を決められて茫然自失となった。
いろいろと粗い点も散見されるものの、多重解決を用いた作品の中では、今まで読んだ中でも最も優れているかもしれない、とまで思ったり。(推理の枠組みはそのままに真相だけが次々と変遷する三津田信三を別とすればだが)
おそらくこんな尖った題材をわざわざ用いずとも傑作を書けそうな作者だが、次回作は何を出してくれるのか心の底から楽しみで仕方がない。続編とは行かなくても「食人法」の存在する設定は引き継ぎそうな気が。
14.11.21
評価:★★★★☆ 9