~あらすじ~
数々の恋と別れが描かれる13編の恋愛短編集。
恋なんて、うまくいく時もあれば、うまくいかない時もある。
うまくいかなかったからといって、嘆くことも涙にくれることもない。
新しい恋を見つければ、はじまりの時の格別さをまた味わえる。
~感想~
これはなんと呼ぶべきか。「葉桜の季節に君を想うということ」にも比肩する作者の新たな代表作と呼ぶべきか、歌野晶午が叩きつけた「イニシエーション・ラブ」への挑戦状と呼ぶべきか。
いずれにしろ今年度を代表する傑作である。
一見ただのミステリ風味ただよう恋愛小説集だ。
だがまずその一編一編の平均点が高い。歌野晶午にこれだけ様々な形の恋愛を描く腕があったのか(失礼)と思うくらい、多彩な物語に驚かされる。
多岐にわたるシチュエーションと、連城三紀彦や泡坂妻夫ばりと言っては褒めすぎだが、それなりに意外性を持ったストーリー展開で、恋愛物などアニメの「タッチ」を母や姉の横でなんとなく眺めていたくらいの自分でもわりと普通に楽しめてしまえる。
そして終盤、そんな小学生並の感想など一気に吹き飛ばす、すさまじい真相が現れるや目を剥いた。
やはり真っ先に思い出したのは「葉桜」よりも「イニシエーション・ラブ」で、思わず「ど●●●●●●●●●●●●●●●(完全にネタバレ→)いつもこいつもお前だったんかい!!」と絶叫したくなった。
正直さほど興味の持てない恋愛短編を13編も付き合わされるのは苦痛になりかけていたのだが、終わってみればこの一発ネタは13編そろってはじめて威力を発揮するものであり、また大ネタが明かされた後に、作者の悪癖として例によって蛇足的に数編続いてしまうのだが、そのラスト数編が本作に限っては素晴らしい余韻と後味を残すもので、これまで着地に失敗し続けてきた(と個人的に思う)作者がついに完璧な着地を決めてくれたといったところ。
恋愛(?)本格ミステリ四天王を挙げるなら、乾くるみ「イニシエーション・ラブ」、麻耶雄嵩「隻眼の少女」、牧薩次(辻真先)「完全恋愛」、そして本作を推薦したい。
私的2014年ランキングを作るにはまだ7冊読まなければいけないが、もうこれで1位は確定でいいんじゃないだろうか。
14.11.17
評価:★★★★★ 10
数々の恋と別れが描かれる13編の恋愛短編集。
恋なんて、うまくいく時もあれば、うまくいかない時もある。
うまくいかなかったからといって、嘆くことも涙にくれることもない。
新しい恋を見つければ、はじまりの時の格別さをまた味わえる。
~感想~
これはなんと呼ぶべきか。「葉桜の季節に君を想うということ」にも比肩する作者の新たな代表作と呼ぶべきか、歌野晶午が叩きつけた「イニシエーション・ラブ」への挑戦状と呼ぶべきか。
いずれにしろ今年度を代表する傑作である。
一見ただのミステリ風味ただよう恋愛小説集だ。
だがまずその一編一編の平均点が高い。歌野晶午にこれだけ様々な形の恋愛を描く腕があったのか(失礼)と思うくらい、多彩な物語に驚かされる。
多岐にわたるシチュエーションと、連城三紀彦や泡坂妻夫ばりと言っては褒めすぎだが、それなりに意外性を持ったストーリー展開で、恋愛物などアニメの「タッチ」を母や姉の横でなんとなく眺めていたくらいの自分でもわりと普通に楽しめてしまえる。
そして終盤、そんな小学生並の感想など一気に吹き飛ばす、すさまじい真相が現れるや目を剥いた。
やはり真っ先に思い出したのは「葉桜」よりも「イニシエーション・ラブ」で、思わず「ど●●●●●●●●●●●●●●●(完全にネタバレ→)いつもこいつもお前だったんかい!!」と絶叫したくなった。
正直さほど興味の持てない恋愛短編を13編も付き合わされるのは苦痛になりかけていたのだが、終わってみればこの一発ネタは13編そろってはじめて威力を発揮するものであり、また大ネタが明かされた後に、作者の悪癖として例によって蛇足的に数編続いてしまうのだが、そのラスト数編が本作に限っては素晴らしい余韻と後味を残すもので、これまで着地に失敗し続けてきた(と個人的に思う)作者がついに完璧な着地を決めてくれたといったところ。
恋愛(?)本格ミステリ四天王を挙げるなら、乾くるみ「イニシエーション・ラブ」、麻耶雄嵩「隻眼の少女」、牧薩次(辻真先)「完全恋愛」、そして本作を推薦したい。
私的2014年ランキングを作るにはまだ7冊読まなければいけないが、もうこれで1位は確定でいいんじゃないだろうか。
14.11.17
評価:★★★★★ 10