小金沢ライブラリー

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映画感想―『ハムナプトラ2』

2010年05月12日 | 映画感想

~あらすじ~
死者の都ハムナプトラから生還したリックとイヴリンはめでたく結婚し、ふたりの間に生まれた息子アレックスと共にエジプトを訪れた。
そこでアレックスは謎の黄金の腕輪を見つけたが、それをはめたまま何者かに誘拐されてしまう。


~感想~
前作から8年後、主人公とヒロインの間に子供も生まれた続編。
アヌビスの腕輪を軸に、たいへんわかりやすいストーリーが展開され、なにも考える必要なく観られる、いたって正しい娯楽作品。
展開の先の先まで予想でき、一つも裏切らない有様だが、こういうエンタテインメントはいつ観ても楽しいし、いくらあっても困るものではない。
あえて借りたり買ったりしてまで観る必要はないが、放送していれば観て損はするはずがない作品である。ロック様の扱いはあんまりだけど。


評価:★★☆ 5
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ブンガク感想-『光媒の花』道尾秀介

2010年05月10日 | ミステリ感想
~あらすじ~
印章店を細々と営み、認知症の母と二人、静かな生活を送る中年男性。ようやく介護にも慣れたある日、幼い子供のように無邪気に絵を描いて遊んでいた母が、「決して知るはずのないもの」を描いていることに気付く……。三十年前、父が自殺したあの日、母は何を見たのだろうか?(隠れ鬼)/共働きの両親が帰ってくるまでの間、内緒で河原に出かけ、虫捕りをするのが楽しみの小学生の兄妹は、ある恐怖からホームレス殺害に手を染めてしまう。(虫送り)/20年前、淡い思いを通い合わせた同級生の少女は、悲しい嘘をつき続けていた。彼女を覆う非情な現実、救えなかった無力な自分に絶望し、「世界を閉じ込めて」生きるホームレスの男。(冬の蝶)など、6章からなる群像劇。大切な何かを必死に守るためにつく悲しい嘘、絶望の果てに見える光を優しく描き出す、感動作。
※コピペ


~感想~
「自分の作品のミステリという側面ばかり取り上げられるのが嫌」「ミステリを離れて書くことはこんなに自由なのかと感じた」とすっかり高村薫化が進んでいる作者だが、今回も前作『球体の蛇』と比べるとミステリ味はわずかに上なものの、読者を騙してやろうという心意気はどこにもないヤマなしオチなしイミなしのヤオイブンガクである。
ヤオイ作品にネタバレなんて遠慮はせず書いていくが、まず冒頭の三作は「望まない性行為を強要された被害者が相手を殺す」という思考停止のように同じ展開で、本を投げ捨てたくなること請け合い。後半三作は「ちょっといい話」でまとめ上げ、読後感はまずまずで、各作品の微妙なつながり具合は『鬼の跫音』などよりも向上しているのだが、前回も言ったがこの程度の作品はいまの道尾秀介ならばモンハンでもプレイしながらあくび混じりに作れるものに過ぎない。あの傑作群を知っている身からすればこんなものが「この全六章を書けただけでも、僕は作家になってよかったと思います」などと胸を張って言える出来だとはどうしても思えないのだ。

勝手な持論だがいまの道尾秀介に欠けているのは読者に対する視点である。「ミステリとして」あれだけ優れていた作品群をものしてきた作者にこの程度の「ミステリとして」十全で無い作品を自信満々に提出されてファンは満足できるだろうか。道尾作品で目の肥えた読者は、この『光媒の花』程度の仕掛けに騙されはしないし、意外性は感じない。騙されるのは作中の人物だけである。
一例を挙げれば「春の蝶」に登場する一人の少女。彼女は精神的な病で耳が聴こえないのだが「最初は本当に聞こえなかったのだが実は後で治っていた」と明かされる。とんだ子供騙しである。しかも序盤で「嘘ではなく本当に聴こえないと診断された」としっかり伏線も張ってあるのだ。
こんなことを「ミステリ」でやったならばアンフェアもいいところだ。たしかに作者の言うとおり「ミステリとは違い自由」なブンガクでしか「耳が聴こえません→病院でも本当だと診断されました→でも実は治ってました」なんて茶番は許されないだろう。

こんなものを本当に自由だと感じているのなら。こんなものを書くために作家になりたかったのなら。
もう、道尾秀介は終わっている。


10.5.10
評価:★☆ 3
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映画感想―『バックトゥザフューチャー』

2010年05月09日 | 映画感想

~あらすじ~
親友の科学者ドクの発明したタイムマシンで、30年前にタイムスリップしてしまった高校生のマーティ。
彼はそこで自分の両親になるはずのロレーンとジョージに出会う。だが、内気なジョージは彼女に告白できないまま、乱暴者のビフにこき使われる毎日。
しかも、ロレーンがマーティのほうに恋をしてしまい……。


~感想~ 映画好きを名乗っている癖に実は初見なのだが、あまりの面白さにぶったまげた。時間SFの魅力にあふれ、考えうる限りのアイデアを詰め込んだ大傑作――などとこんな超有名作をいまさら持ち上げてもしかたない。
面白い映画とはこういうものだ!ということを堪能させていただいた。
さすがwikiに「感想サイトなどでナンバーワンに挙げる者も多い」と思いっきり主観で書かれているのに「要出典」と付されないだけはある。
今まで観た映画の中でも余裕で五本の指に入る逸品でした。


評価:★★★★★ 10
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映画感想―『20世紀少年 第1章 終わりの始まり』

2010年05月08日 | 映画感想

~あらすじ~
1969年。少年ケンヂは、地球滅亡を企む悪の組織に立ち向かう正義のヒーローを夢見て、仲間たちと「よげんの書」を作り上げた。
そこに描かれたのは、現実には起こりえない“未来”のはずだった。

1997年。
大人になったケンヂの周りで、幼なじみの死をきっかけに次々と不可解な事件が起こり始める。時を同じくして、世界各国では謎の伝染病による大量死が相次ぐ。これらの事件はすべて、かつてケンヂたちが作った「よげんの書」のシナリオ通りに起こっていた。
そして2000年12月31日。「よげんの書」に書かれた人類が滅亡するその日が訪れる……。


~感想~
原作は世紀末救世主伝説になったあたりで投げ出してしまったが(のちに読了はしたが後半の失速ぶりは壮絶なものだった)、この実写第一作は原作の文句なしに面白かった部分までが描かれているので、そうそう外すことはない。
配役も絶妙で、とにかくビジュアル的に似ている人を選んだとしか思えない様子で、原作のイメージを損なわないのだが、なぜか主人公のケンジだけはさっぱり似ていないという片手落ち具合が惜しい。
全体としてはよく2時間にまとめ上げたとは感心するが、ラストシーンが脈絡もなしに第二作へのプロローグにつながってしまい、原作を読んでいないと何がどうなったのか理解できないだろう。
あれは単純に原作の趣向をそのまま踏襲すればよかったと思うのだが。


評価:★★☆ 5
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ミステリ感想-『百番目の男』ジャック・カーリイ

2010年05月07日 | ミステリ感想
~あらすじ~
連続放火殺人を解決し異常犯罪担当部署に配属された刑事カーソンには暗い秘密があった。
だが連続首切り殺人が発生し事件解決のため、カーソンは過去と向き合うことに。
死体に刻まれた奇怪な文字に犯人が隠す歪んだ意図とは、首切りの真相とはなにか。


~感想~
「前代未聞の犯行動機」「空前絶後のバカトリック」という評判を聞いていたが、いやはや全く噂に違わなかった。
全編にわたってアメリカンなキャラたちがアメリカンな会話を交わし、アメリカンな描写とアメリカンな展開がくり広げられるので胸焼け寸前。
デビュー作とあってかストーリーは煩雑で、事件、捜査、恋愛、過去、格闘と詰め込みすぎで目が回る。登場人物も描写も不必要に多い。
しかし若さ爆発の熱血主人公や、狂気に染まった名探偵(?)、癖のありすぎるヒロインと、アメリカンな人格を差し引いてもキャラは魅力的で、最後まで興味を引いてくれる。
で、噂の動機とトリックである。これがすごい。本当にすごい。そして果てしなくバカだ。こんなのを思いつけるのは世界中探しても一人きりだろう。
なんでも映画化の話が持ち上がっているそうだが、どう描いてもバカ映画にしかならないし、一般公開すら難しいと思うのだがいったいどう映画化する気なのだろうか。
想像以上にとんでもないことは保証するが、あまりにもくっっだらないバカ仕掛けなので、取り扱いには要注意である。


10.5.7
評価:★★★★ 8
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マンガ感想-『Q.E.D. 証明終了 19』加藤元浩

2010年05月06日 | マンガ感想
怪しいってのは勘か?
僕は勘なんか持ってません。
……かもな。



「マクベスの亡霊」★★★ 6
~あらすじ~
シェイクスピアの戯曲マクベスの舞台で主演を務めるベテラン俳優を、積もり積もった恨みから殺害した若手俳優。
だがまるでマクベスのあらすじをなぞるように、彼は殺した俳優の亡霊と燈馬の推理に追い詰められる。

~感想~
小さな、しかし物珍しい仕掛けが次々と積み重ねられていくなか、ミステリマニアにはおなじみのトリックが急に降ってわいて驚かされた。
犯人の細工、燈馬の気づき、偶然のトリック、そして罠。多くの要素を出し惜しみせず詰め込んだ佳品。


「賢者の遺産」★★★ 6
~あらすじ~
ひょんなことから昭和初期にタイムスリップしてしまった可奈。
燈馬に似た書生とともに資産家が残した隠し財産をめぐるトラブルを収束させることに。はたして可奈は元の世界に戻れるのか?

~感想~
シリーズ作品ながらタイムスリップという大胆な仕掛けを持ってこられるのがマンガの強みだろう。
単純にタイムスリップ譚として話が面白い。ラストも作者は肝を心得ている。
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マンガ感想-『Q.E.D. 証明終了 18』加藤元浩

2010年05月05日 | マンガ感想
「名探偵"達"登場!」★★★ 6
~あらすじ~
たった3人きり、しかし個性派ぞろいの探偵同好会。彼女らの前に現れた、数々の小事件。
ケーキの盗み食い、無人のトイレに響く声、鏡に映る女の霊。はたして真相は?

~感想~
初登場にも関わらずキャラの立ちまくった探偵同好会3人のやりとりだけで最後まで引っ張ってくれる。
トリックは物理化学の応用授業だが、組み合わせと扱い方でこうも楽しく見せられるのだ。


「3羽の鳥」★★☆ 5
~あらすじ~
笹塚刑事の故郷で心中した男女の遺体が発見された。
事件の鍵は笹塚の記憶の中に隠されていた?

~感想~
謎めいた絵本をうまく絡め、どうということもないトリックで小粒な作品を作り上げたという印象。
これといった仕掛けが無いのに一定レベルに達する作品をものしているのだから、この場合は褒め言葉である。
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マンガ感想-『Q.E.D. 証明終了 17』加藤元浩

2010年05月04日 | マンガ感想
「災厄の男の災厄」★★★ 6
~あらすじ~
アランの誕生日パーティーに招待された燈馬たち。それはアランが人材確保のため、招待客に盗難事件の容疑をふっかけるための作戦だったが、事態はアランの予想を離れた騒動となる。

~感想~
トリックそのものよりも構成の妙が光る。最後の一言がなんとも心憎いではないか。
こういうことをちょくちょくやってくれるから、このミステリは面白いのだ。


「いぬほおずき」★★☆ 5
~あらすじ~
映画の撮影中、模擬刀が本物とすり替わり主演俳優が死亡した。そして事件をめぐる人間模様は製作中の映画「いぬほおずき」を軸に浮かび上がる。映画に秘められた事件の「謎」とは?

~感想~
密室とかトリックとかかなり投げやりなのだが、その分ストーリー展開に気合が入っている。
ラストの燈馬の一言や、映画と現実の虚々実々の絡み合いなど見どころが多い。
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ミステリ感想-『ラガド 煉獄の教室』両角長彦

2010年05月03日 | ミステリ感想
~あらすじ~
ある私立中学校に1人の男が侵入する。1人の女子生徒が彼の行動を見て叫んだ。「みんな逃げて!」果敢に男に立ち向かう彼女を悲劇が襲う。
そして事件後、警察で秘かに行われた、ある再現実験。そこから思いもよらない事実が明らかになっていく……。
刻々と変わっていく92枚の現場見取り図が付された異色のミステリ。
第13回日本ミステリー文学大賞新人賞受賞作。


~感想~
面白かったのは設定だけ。
92枚の見取り図は確かに魅力的だったが、終わってみれば3分の1は単に「今この席の生徒が話してますよ」というだけのもので、ほとんど活かされていない。
いっそ見取り図に全てを賭けて、見取り図でできるあらゆることを試していれば面白かったかも知れないが、デビュー作ということもあってか、無駄に陰謀譚を絡めて風呂敷を広げてしまい、オチも観念的で締まらずじまい。
唯一褒められるのはスピード感の高さだが、それも冷静に考えると見取り図を入れるためにページの下三分の一が白いのだからむべなるかな。筆力もところどころ失笑するしかない有様で、これといった仕掛けも見当たらず、本当に期待はずれであった。
そういえば海野碧と同じ賞だなこれ……。


10.5.3
評価:★ 2
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映画感想―『呪怨 黒い少女』

2010年05月02日 | 映画感想

~あらすじ~
マッハ貫手!


~感想~
怖さも構成もバカ度も『白い老女』に及ばず。
ホラーとしては「黒塗りの少女がたまに出てくるよ」くらいのレベルなので、まず基本的に全く怖くない。
いちおうバラバラにした時系列を最後にまとめ上げてみせた『白い老女』と比べると脚本も適当で、個々のエピソードのつながりも薄く、60分という分量ですら退屈させてしまう始末。
バカ映画としても見所は「マッハ貫手!」くらいしか無いので本当に語るべきことがない。
若いのにやさぐれてうらぶれた雰囲気が漂う加護ちゃんの演技だけは見ものだが、たぶんあれは演技ではなく素で醸し出してる雰囲気だしな。


評価:問題外
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