前回の「かかりたくない」の続きだ。裁判官にかかりたくない話は前に何回かしたので、すこし医者の話をしよう。医者同士の会話をそばで聞いた話である。手術中に麻酔が切れることがたまにあるらしい。まあ、個体にもよるだろうからね。
こういうときに医者は深刻に反省して恐縮するかというと全然違うらしい。たまにはしょうがないさ、というわけだ。あっさりしたものだ。一般人の感覚とは違う。対象をモノとしてみるからだろう。もっとも、麻酔の効きは個人差が大きい。酒飲みにはあんまり効かないらしい。逆に少量でもショック状態になる体質の人もいる。
多すぎても危険だしね。麻酔というと手術でなくても歯医者に行くとたいてい使われている。歯医者の麻酔事故というのは以外に多いらしい。この間も子供が動くので麻酔をかけたら多すぎたか、体質かでショック状態になって死亡したという記事があったが、報道されない事故は毎年かなりあるようだ。歯医者の無倫理、いい加減さも相当なものだからね。
なかには誠実な、あるいは臆病な歯医者もいる。友人が麻酔のアレルギーがあるから注意してやれといったら、歯を削るのに麻酔を少しずつ使う。すぐ効かなくなって痛くなると友人が身振りでしらせる。そうすると歯医者がまたすこし麻酔をさす。そんなやり取りが終わるまでに十回以上あったという。これも歯医者だから出来るので、腹を開いて中身をさばいているときに、ときどき痛くなりましたか、なんて患者に聞くわけにもいかない。