今年は「国際イモ年:IYP(International Year of Potato)」である。イモとはジャガイモであるが、日本ではサツマイモなどのイモ全般の普及を推進している。原産地のペルーが決めたよ うである。
ジャガイモは、8000年ほど前からアンデス地方で栽培されている。16世紀にヨーロッパに渡り、多くの人の命を救った。ジャガイモは、生産量が世界4位の食料作物である。痩せ土にも強く、何にもまして栄養が豊富でバランスが取れている。
穀物の場合は、出来高の50%しか可食部分がないが、ジャガイモは85%以上が利用される。何よりも穀物のように、長年の貯蔵が利かない。せいぜい一年程度である。だから戦略物資になりにくい。家畜に与えることもない。
痩せ土でもできるが、作付にも収穫にも人力がいる。ビタミンが豊富でカロリーが高くバランスが良い。そのために、貧者の作物と言われている。IYPのうたいは、「畑の宝物」である。
アンデス地方には、現在でも4000種類から5000種類の品種があり、病気や作付地方の風 土に合わせた品種を選択できるし、病気が蔓延した時でも耐病品種を見つけやすい。昨今の、企業が行う営利目的の、遺伝子組換えとは大きく異なる。
年間生産量が3億2300万トンで世界4位の生産量がありながら、前記のような理由から商業主義者の対象にならない、珍しい食物である。ジャガイモは、平和の作物でもある。
ここ数年間、ジャガイモは毎年4.5%の生産量の伸びを見せている。特に後進国で増産傾向にある中で、唯一減産しているのが日本である。輸入量を増やしているのも日本である。
IYPは、食料安全保障の観点と貧者の救済のため、更には気候変動などにも対応するためと持続型の地域農業普及の主力のためにと、FAOなどが取り組んでいる。日本はそうした動きに逆行する形にある、変な国なのである。
穀物の国際価格を引き上げ、自給率向上に興味ない国家としては当然かもしれない。