今年11月9日の朝日新聞に、ペシャワール会の中村哲医師が「アフガン復興への道」と題した記事が掲載されている。日本でもっとも、アフガニスタンやパキスタン事情に精通されている方である。
中村医師の主張は非常に興味深いものの、内容的には当然の極めて常識的なことである。ペシャワール会のワーカー伊藤和也さんの死を、政府の要人(多分町村官房長官談話と思われる)が「こうしたテロとの戦いのためにもインド洋上での給油は継続しなければならない」と言ったのである。私も耳を疑ったが、現地の絶大な支援を受けながら働く人を救うために、アメリカ艦船に洋上で給油するロジックが全く分からない。中村医師も呆れていた。政治的に利用することへ怒りを隠していない。
アフガニスタンでは、米軍やISAF(国際治安部隊)が暴力の連鎖を拡大している。アフガニスタン政府でさえ、タリバンに和平を申し込んでいる。欧米の主張する「テロ対策」では、元々兵農未分化の地域にいくら空爆を行っても、一般人が殺される事態になるだけである。
そもそもアフガニスタンは農業国で、干ばつ前には穀物をほとんど自給していたそうである。それがかなわないのは水の問題である。水さえあれば決して貧しくない。灌漑用水路の整備や治水工事をしてやれば治安安定となる。これこそ本当の「テロ対策」ではないだろうか。
日本がアメリカ支援を行っていることは、つい最近まで知られなかったようである。親日感情はまだあるものの、このままではいずれ日本も標的にされる日が来るかもしれない。今なら撤退可能である。
日本はアメリカの顔色をうかがうことを止めて、アフガンに生きる人たちにとって何が大切かを見極め軍事に頼らない支援を打ち出すことである、と中村医師は結語している。重い言葉である。