ワシントンの防衛シンクタンクの戦略予算評価センター(CSBA)によると、2001年の同時多発 テロ以降今年の6月までのアフガニスタンとイラク侵攻の戦費は、9040億ドル(約81兆6千億 円)になっているという。来年の日本の国家予算とほぼ同額である。因みに、米政府監査院(GAO)は9040億ドルはじき出しているから、そう外れてはいない数字である。
イラク単独には6840億ドルの費用がかかっている。倍以上の年月のベトナム戦争が5180億 ドルであるからこれ上回ったことになる。第2次世界大戦にかかった費用に次ぐものである。ブッシュは一人でこんな大金をどぶに捨てたのである。
世界はサブプライムに端を発した金融恐慌から、世界不況へと進みつつある。多くの学者たちは、この不況の発端となったサブプライム問題にその原因をなすりつけようとしている。
試算された戦費は戦争に直接かかわった金でしかない。実際は、本来なら健全な形で社会の一員になるべき若者を無数に葬り去ったことによる損失や、経済行為の停滞などはこの中に含まれてはいない。それれを含めると3兆ドルになると、スティグリッツは試算している。
しかしこの間に、ブッシュが無根拠に基づき仕掛けた戦争が大きく影を落としていることは、誰も語ろうとはしない。戦争は非生産的な公共事業である。おまけに極めて非人道的でもある。
この無為の戦争が、経済的にも社会的にもアメリカに大きな負担になったことは否めない事実である。サブプライム問題は、そうした背景を弱者層がいち早く受けただけのことであろう。
投機マネーがまず石油に走ったのも、イラク戦争と直接関係している。イラク人の心情は、サイズ10の靴をブッシュに投げつけた記者を解放せよと、デモがあちおこちで起きていることでもわかる。同じ靴を買い求めるのは、せめてもの庶民の抵抗だろうか。
経済学者は金のことしか語らない。本当はブッシュの引き起こした戦争が、今回の世界不況を直接引き起こしたのではないかと素人なら考えるが、的は外していないだろう。