今年7月に決裂したWTO(ドーハ開発アジェンダ、DDA)が、また開催れている。年内に決着をしたいとのことである。
日本では、農協関係者が懸命に訴えを行っている。本当は消費者が騒ぐべきなのである。生産者団体もそうした訴えを行うべきである。
食料自給率を向上させるとする政府の方針は、どこに行ったのであろうか。洞爺湖サミットで、低炭素社会を目指すと公言した姿勢はどこで貫くのだろう。すでに日本は世界で最も農産物の関税を低くしている国家なのである。(左の表はクリックすると大きくなります)
地球環境が危機的状況を迎えつつある現在、大量のエネルギーを消費して貧国の人たちの頭を越えて地球の裏から穀物を大量に輸入することが必要なのだろうか。金があるからという唯一の根拠で、家畜に給与したり輸入した食料でも、一割が廃棄される国家になぜ輸入されるのだろうか。
WTOはアメリカの言いなりに翻弄されている。WTOの基本となったウルグアイラウンドの1986年から、22年も経過している。その間に、地球環境の悪化は著しいものがある。
ドーハラウンドになってからも、7年経過している。この間に限ってみても、食料問題や国家間の格差あるいは利害関係の対立は、予想もしなかったものがある。とりわけ中東問題は、各国にテロ事件を多発させている。アフリカの政情不安は、食料を人々から取り上げてしまった。
WTOは、「貿易自由化によって世界経済の発展を進める」とされている。今年起きた、金融危機は明らかに、行き過ぎた市場経済の行きついた結果である。投機マネーが穀物や石油の買い付けに走って、世界経済を混乱させた。
こうした解決困難な新しい局面が次々と展開されていても、WTOはひたすら貿易の自由化をうたいつづけるばかりで、何の能もない。すでにWTOの理念は失せているように思われる。
WTOはただアメリカの、利益を代弁する機関になり下がっている。多極化する世界にあって、相対的にアメリカの地位が低くなっている。WTOは基本理念を見直す時期に差し掛かっているといえる。