エゾシカの増加が止まらない。かつては愛くるしいシカを追って、やっと見つけて遠くから望遠で写真を撮ったものである。今は標準レンズでも、数頭入った写真を撮ることが出来る。冬になると、30頭ほどの群れも珍しくない。50頭を超える巨大な一群を見ることもある。
エゾシカの対策は、主に農業被害として行われている。農地を柵で囲うのであるが、農地は守られることになるかもしれないが、シカたちは森で暮らすことになり、その分森が荒らされる。又、シカたちはハンターなどに追われて、鳥獣保護区に逃げる。鳥獣保護区は自然保護区ではないが、貴重な自然が残っているところでもある。そこで彼らは、木の幹を剥がして樹皮を食べる。土を掘って夏になるとお花畑になるところを荒らす。
根室地方の農地は牧草畑だけといっていいものである。牧草畑をシカ対策の柵で囲うことは殆どない。最近は離農者が増えて、遠くに牧草地を持っている農家が増えている。彼らは春になると刈りに出掛けると、もうすっかりシカに食べられていることも珍しくはない。
牧草地は、森の中と違って明るい春の日がまんべんなく照らす。冬の間食べ物が不足したシカたちは、真っ先にに美味しい牧草を狙うのである。やっと芽生えたばかりの牧草は夏まで成長が遅れたままとなる。この辺りでは2回牧草を刈ることが出来るが、一度しか収穫できない。
現在北海道にはエゾシカは、推定で64万頭いることになっている。もう少し多いかもしれない。これらの32万頭がメスで、繁殖適期のものが少なくとも7割はいることである。20万頭以上が分娩する計算になる。幼児の事故などを考えても、18万頭くらいは成獣になるものと思われる。毎年18万頭増える現実を直視しなければならない。
際淘汰しているのは1万数千頭になるらしい。これでは全く増加に歯止めが利かない。ハンター不足や高齢化、それに先ごろあった事故なども伴う危険な作業である。囲い込みなどによる、群単位の淘汰をしなければ追いつかない。肉や皮などの利用を進めることもしなければならないだろう。
エゾシカの増加は全く人為的なものである。保護することばかりではなくこうしたことへの責任も問われているのである。
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