この数十年間食糧問題は、楽観論と悲観論が交差する形で論陣を張ってきた。悲観論=危機論はその都度、生産技術や流通の発展などで、楽観論に押されていた。
21世紀になり、間もなく人口が70億人を超えると、気候変動なども相まって、楽観論は行き先が見えなくなってきた感がある。
悲観論の最先端は、レスターブラウンの「誰が中国を養うのか」という著書に象徴される。中国は激怒したこの本は、1995年に著されている。
要するに人口最大の中国が、豊かになると食糧を自給できなくなり、世界中で食糧争奪が起きるというものである。争奪するものがあるうちはいいが、そのうち足らなくなるというものである。
中国は豊かになるにつれて、食肉への傾向が強くなり、量産のために穀物を世界に求めるようになった。
博士の指摘した時間より若干緩やかであるが、中国の食糧漁りは現実のものなっている。左の表は、中国がこの10年少々でいかに多くの大豆を輸入しているかを表している。(クリックすると大きくなります)
大豆は元々東南アジアのもので、英名のSoybeansは醤油用の豆という意味である。中国は伝統に恥じることなく、既に日本の10倍を超える量を、アメリカとブラジルから輸入している。
これだけではない。大型畜産に欠かせない、トウモロコシも一時の輸出から、完全に輸入に転じている。中国の食生活の転換と、何よりも豊かになったことの結果である。
中国は日本の10倍を超える人口を抱えている。こうした勢いも、10倍を超えるスピードで変化している。
食料が金で買えなくなる時が、必ず来る。そのことを知ってか知らずか、中国は臆せず経済大国へと突き進むのである。