日本学術会議が、やっと本当の提言をしてくれた。原発から出る、高レベル放射性廃棄物は、地中深く埋めるとする国の最終処分案は安全ではないと、11日原子力委員会に提案をした。
使用済み核燃料を再処理した後に出る高レベル放射性廃棄物は、毎時1500シーベルトと人がわずか20秒で死に至る放射線を放っている。国は2000年、廃棄物をガラスで固め、地下300メートル以上の地層に埋める「地層処分」とするよう関連法で決めては見たが、処分地は未だ白紙のままである。
原子力委員からの要請で、学術会議が原子力や地質学や歴史、社会、経済など各分野の研究者などで検討委員会をつくっての、今回の提言である。
提言は、地震や火山活動が活発な日本列島で、万年単位で安定した地層を見つけるのは難しいと指摘している。当然である。
我々半可通のものでも、こんな基本的なことはすぐに思いつくことである。これまで検討されてきた最終処分地は、すべて地質学的にあるいは物理学の見地から選ばれたものではない。
過疎地で、人がいなくなって困っているところばかりである。いわば社会学的な観点から、検討、調査しているのである。原発そのものがそうである。
提言は、核廃棄物の量的なものなどが不明のまま、一部の関係者だけで原発の稼働や、ごみの処分を決めてきたことを指摘している。
更には、交付金がこうした問題を深刻にする結果になる、とも指摘している。その上で「政策をいったん白紙に戻す覚悟で見直すべきである」と結論している。
安全な処分方法が見つかるまでの数十~数百年の間は、地中深くではなく、いつでも移送できる形で暫定的に保管するよう提言している。保管を担う地域には交付金などで無理やり納得させるのではなく、保管地に政府機能の一部を移転して安全性への信頼を得るべきだと訴えた。
しかし、提言通りに将来的に、処分方法や最終処分場が見つかる保証などないのが現実である。我々は脱原発をしたとしても、とても大きな負の遺産を未来に残していることを、自覚しなければならない。