とても恐ろしい本を読んだ。「ネオニコチノイドが日本を脅かす」水野玲子著七つ森書館刊1800円である。帯に”子どもの脳が危ない”とある。ネオニコチノイドがとは、農薬の成分の名称である。
北海道には夏になると養蜂業者が、日本列島を縦断してミツバチを運び込んで飼うのが、見慣れた光景であった。見慣れたと言っても、道路を離れた森や畑などに巣箱が置かれているため、府県から来られた観光客などは、見ることが少ないと思う。
ところがこの数年こうした光景を見る機会が、極端に少なくなっている。時を同じくして全国各地で、ミツバチの集団死亡例(CCDと言われている)が、発生している。毎年2~3億匹のミツバチが死亡しているのである。
この原因が、新しい農薬ネオニコチノイドであることを、本書は暴いてくれている。左はこの50年ほどの農薬の変遷である。(クリックしてください)1990年代になって安全を売り物に、ネオニコチノイド系農薬が登場したのである。
ネオニコチノイドは、昆虫の神経系を遮断して(アセチルコリンの伝達を惑わす)、昆虫を殺すと説明している。温血動物には無害というのである。
目に見えて真っ先に犠牲になったのが、ミツバチでありトンボたちというわけである。害虫にだけ効く薬品などない。この薬は、浸透性なので農薬を吸い上げた植物の分泌物でも、昆虫は死ぬのである。昆虫の激減は、生態系の破壊につながっている。
この農薬が、人にも影響を及ぼすことが早くから指摘されている。人も昆虫も、神経の伝達は基本的に同じである。日本では安全を理由に濃度が高まり、空中散布の量が極端に増えてきている。その散布で、幼稚園児たちに目まいや頭痛や腹痛それに神経障害が発生している。
農業用の農薬だけではない。芝用の農薬やガーデニング用やペット用それに住宅用にも販売されている。本書は、最近の神経性の病気(神経性難病)の急増にも関係があると、本書は指摘する。浸透性であるための、追跡障害はされてはいない。
ヨーロッパ諸国では数年前から規制や使用禁止が行われている。アメリカでさえ、カルフォルニアを皮切りに使用禁止に動いている。日本は今のところ農水省は、ネオニコチノイド農薬の推進を続けている。
その最大のスポンサーは、住友化化学である。会長は米倉弘昌で、経団連の会長でもある。農業に効率を求めると、こうした農薬の多用になる。TPPはこうした効率を求め、米倉たち農薬業者は潤うことになるのである。