今回の選挙で公然とTPP参加を訴えていたのは、みんなの党だけである。どの党も推進者と反対者が混在する。維新の会に至っては、暴走老人を代表に選ぶまではTPP参入であったが、慎重姿勢に転じている。
TPPに乗り遅れるぞと、無関税システム導入に躍起になっている、財界などが引き合いに出すのが、大統領選挙の真っ最中の韓国である。韓国はEUともアメリカとのFTA協定を結んでいる。
財界出身の李明博が大統領になってからは、経済成長が著しい。韓国はEUに車を売ると日本の車より、5~8%安く売れる。液晶テレビも同じである。日本の企業の競争力が削がれてしまうと、財界の連中は主張する。
韓国は3年ほど前から、自殺率が世界一位である。日本も高いが今年は、15年ぶりに3万人を切る見込みである。
韓国は10万人あたりの自殺者が、3年前で33.5人である。日本は23.8人である。韓国の自殺者の特徴は、女性と高齢者に多いということである。若者も増加が著しい。自殺者は10年前のほぼ倍になっている。
これは韓国が急激に経済成長した時期と一致している。
韓国のGDPに占める上位10社だけで、75.3%にもなっている。特にサムスン電気の13%にヒュンダイとLGの3社で20%を超えるのである。
韓国では競争と格差が、経済成長の陰に隠れて実態が報道されることが少ない。「躍進する韓国、凋落する日本」と報じられるのは、GDPに偏った見方に過ぎない。
既に韓国の農業は崩壊して、この10年で農家戸数は半減している。企業は、東欧やロシアに農地を買い付けに走り回っている。ランドサッシュと言われる現象であるが、食糧生産体制としては極めて危うい供給体系であると言える。
医療も福祉も放置されたままである。上記の高齢者の自殺は、医療負担が日本の倍もあり(34%と16%)、原因の一つと考えられている。死亡者数も、昨年度は25万7千人超で、歴史上最高の死者数となっている。
韓国経済の最大の欠点は、国内需要がきわめて少ないことである。GDPの80%は、貿易によって成り立っている。
若者の大企業の就職競争率は、驚くことに100倍以上となっている。日本の就職難とは全く異なる、極めて厳しい競争社会が韓国経済を支えているのである。
その競争と貧困格差の歪が、一般庶民に降りかかり、社会問題化している。李明博は竹島に上陸したり、過激な発言を日本に向けて繰り返しているのである。
日本は、一定の生活レベルになり、豊かであることを背景にした文化的な営みの中で、格差をなくし国内需要を高め、食糧の自給率を上げて、自然環境に逆らわない社会を創り、憲法の前文を尊重した国際協力をする国家になるべきなのである。
韓国を反面教師として、TPPなる無関税競争社会に日本を導くべきではないのである。