山崎さんの奥さんの記事です。彼女はユダヤ人ですが、その数奇な運命については2010年4月6日に少し紹介していますので未見の方はぜひご覧ください。
アラブの中学校の本音
山崎エステル
子どもたちの意見調査から
私たちの共学共存活動の大きな課題は、アラブ側の現場の声を多く集めて新聞に掲載することです。今回はこの課題に取り組みました。しかしこの仕事は現実にはなかなか難しく、アラブ側の声を集められない理由がいろいろあります。
その最大の理由は、アラブ人社会が大家族的な環境にあり、何か起こるとあっという間に噂が隅々まで広がることです。つまり共学共存の活動に従事する人々は、村人の反応を気遣わなければならないのです。学校関係者は特に周囲の噂に神経を遣っています。当然のことですが、村人全てが共学共存に賛成している訳ではなく、反対派、過激派もいるのです。そんな環境のアラブの村に、私は何度も足を運んでいます。もちろん、私たちが村で活動すると非常に目立ち、多くの視線が向けられているのを感じます。毎回のアラブ村訪問には若干抵抗もありますが、中学校の生徒たちから直接に率直な声を聞くため、そんな気持ちを克服して情報収集をしようと張り切って訪問しました。
いつものように、夫を運転手兼アドバイザー役で同伴して中学校に行きました。早速校長室に通されました。校長先生は開口一番、「生徒たちの個人名や写真は公表しないでください」と厳しく注文されました。これは活動内容が公表されることにより、周囲から反発が発生する可能性を防ぐためです。それでも校長先生から快く訪問を許可していただけたのは、アラブ側も本音では共学共存の糸口を捜している証拠なのだと思います。受け入れ姿勢も非常に友好的で、校長室で和やかに談笑できました。この現場の声は現在の社会情勢を超えて、平和を望む本音なのでしょう。共学共存の重要性を十分認めておられるという感じが溢れていました。「ケレン・ハオール第3号」に、今回取材した中学校の生徒たちの素直な意見を、皆様にお届けできることに喜びを覚えます。同時に、この訪問を実現させてくれたアラブ村の学校関係者の協力に深く感謝します。
アンケートと回答 (13歳から15歳までの生徒20人が参加)
Q: イスラエル独立前、あなたの 家族や親戚は、どこに住んでいましたか
A: 全員がパレスチナ国と回答(歴史上、パレスチナ という国名は存在しませんが、彼等はパレスチナ国と明記しました) (実施されたアンケ-ト用紙の例)
Q: 現在、あなたの家族や親戚は、どこに住んでいますか A: 全員がイスラエル国のカッセム村と回答 Q: あなたは、どこの国の人ですか
A: パレスチナのアラブ人 - 13人 (65%) 占領された土地に住むパレスチナのアラブ人 - 3人 (15%) イスラエルのアラブ人 - 2人 (10%) パレスチナ人 - 2人 (10%)
Q : 「パレスチナ」の意味を説明してください
A: パレスチナとは、私の両親が土地の所有者という意味で、イスラエルの占領と同時に土地を捨てて逃げた人がパレスチナ人と呼ばれ、占領されても土地に住み続けた人がイスラエルのアラブ人である。
Q:共学共存のための合同活動を始めた時と、最近の活動の後とでは、何か違いを感じますか
A: 大した変化は感じない - 6人 (30%) ユダヤ人は私たちを好きになれないと思ったが、面談の後では好きになってくれると感じた - 11人 (55%) 合同活動の後ではお互いに良い絵が描けると思った - 1人 (5%) 変化は感じなかった。「ユダヤ人はユダヤ人だ」と思った - 1人 (5%) ユダヤ人は好きになれない。合同活動の後も同じだった - 1人 (5%) しかし、次の活動を心待ちにしていると付け加えた生徒が6人(30%)いた。
Q: 共学共存活動は重要だと思いますか
A: 重要だと思う -18人(90%) その理由は: お互いにありのままの姿を知る機会となる 共通の話題を見つけられると思う 協力し合う必要性を感じた 同じ国に住む以上お互いを知る必要があり、交流の回数を重ねて関係を強めていきたい さほど重要ではない - 2人(10%) ユダヤ人とは仲良くなれないと思っていたが、面談の後では仲良くなれると思うようになった
Q: 共学共存活動は将来のために役立つと思いますか A: 仲良く暮らす必要があるから役に立つと思う - 19人(95%) Q: このような活動は国にとっても役に立つと思いますか
A: 共学共存活動に参加したユダヤの子供が政治家に育てば、平和は開けると思う お互いが理解できれば平和は近づく ユダヤ人たちがアラブ人は良い人たちだと感じるようになれば、平和はやってくると思う
(アンケート設問と調査実施: 山崎エステル、翻訳: 山崎智昭)
その他、中島ヤスミン氏の「ユダヤ・アラブ少年政治懇談会を見学して」の記事がありますが、後日紹介予定です。