南東の角にあるこの出窓は、猫たちのお気に入り。
お客さんが来ても、早いもん勝ちで、定員1名の枠を、取り合ったのか、譲り合ったのか、誰かが、いつも丸まっている。
この出窓は、高さ90センチ。
何の苦もなく飛び上がって、音もなく飛び降りていたよねぇ。
こたろうさんは、おとなのなかで優雅に生きてきたから、あれこれと、おねだりが上手。
5センチもあれば、通り抜けることは簡単なのに、自分の体の二倍は扉を広く開けてやらないと、いつまでも「ニャー、ニャー」と、鳴いている。
根負けして、開けてあげるのは、この私。
そして広々と開いたとびらを、悠々と抜けていくのは、こたろう。
そして、この出窓に上がりたい時に私がそばにいると、視線で、あそこと指示して、抱き上げさせようとする。
ある日、どさっと音がしたので、行ってみると、出窓にあがりそこなったらしい現場に、遭遇した。私と目があると「てへっ」というような顔をする。
上にあげてぇ~というおねだりは、単なる手抜きだと思っていたのだが、本当に上がりにくくなってきたことを、知らされた。
たった一か所、彼が開けることのできない扉があって、この扉は、上に書いたように、私をドアマンの如く使っていたのだけれど、そのことと、出窓の件は、まったく意味が違ってくる。
はぁ~、こたろうは年を取ったのだ。
去年までは、ちっとも思い至らなかったけれど、確実に時が飛んでいく。
足腰が少し弱っただけなのだけれど、何の病気もしていないし、毛艶もよいのに。
一瞬、その先のことを考えてしまって、ぼうぜんとする。
誰もいなかったから、こたろうを抱きしめて、号泣してしまった。
まだ、想像するのは、早すぎるのに。
スイッチが入ってしまって、止められなかった。