熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

フランクフルト国立管弦楽団・・・重厚なドイツ音楽の夕べ

2005年05月18日 | クラシック音楽・オペラ
   昨夜芸術劇場でフランクフルト国立管弦楽団のコンサートが開かれた。
   曲目は、サービス満点で、「未完成」、「皇帝」、「田園」、そして、アンコールは「フィガロの結婚・序曲」なので、客席には、小市民もちらほら、日頃、コンサート・ホールから足の遠ざかっていたクラシック・フアンも帰ってきた感じで、会場は華やいでいた。

   最初のシューベルトの未完成は、私には、極めて荒削りな演奏で、ドイツの無骨さが出た感じで、少し違和感を感じた。
   仕方がない、と言うのは、もう17~8年前に、アムステルダムで聴いたレナード・バーンスティンがコンセルトヘボウを振った「未完成」が忘れられないからである。
   芳醇な年代モノのボルドーの赤の様なコクとビロードの様に滑らかと言うか、えも言えない美しいサウンドをコンセルトヘボウから引き出し、モーツアルトとは少しちがうのだが、最後まで、天国からの音楽の様な「未完成」を聞かせてくれたのである。
   コンセルトヘボウは、世界有数トップクラスの楽団だと思うが、定期公演に3年通いながら、後にも先にも、あんなに美しいサウンドを聴いたことはなかった。

   「皇帝」は、ピアニストが、ジュリアードで学んで欧米で活躍中の「谷川かつら」。実に繊細で優しい、しかし、時には豪快なタッチでベートーヴェンに挑戦、爽やかな心地よい演奏であった。こうなると、さすがに、ドイツのオーケストラで、実に、ベートーベンの曲想の盛り上げ方が上手く、つきつはなれつ、ソロピアノをバックアップする。

   私は、この「田園」が、一番今夜のフル管が燃えた素晴らしい演奏だと思った。緩急自在、あの入れば抜け出せないような「黒い森」の雰囲気がチラッと現れたり、優しい牧場に連なる小さな森や小鳥の囀る田園地帯が展開される。女性楽員のフルートとオーボエのソロが実に優雅で美しい。
   やはり、ドイツの楽団にベートーベンを演奏させれば他の追随を許さない。音を飛ばすこともあるが、骨の髄から沁み込んだようなベートーベン・サウンドは、N響と言えども、この楽団には及ばないであろう。

   とにかく、有名すぎる名曲を揃えたサービスしすぎの演奏会、下手をするとダレテシマッテぶっ壊しになるが、指揮者の「浮ヶ谷孝夫」、実に上手く、フル管のドイツ魂と言うかドイツ気質を引き出して、縦横無尽に歌わせていた。
   最後のフィガロで、上手くダイナミックで劇的ななテンポに乗って演奏会を締めくくるなど、実にサービス精神満点であった。

(追記) 添付の写真は、フル管と関係のない某米国楽団のモノ
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