熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

ベルギー象徴派展・・・世紀末の怪しく美しい芸術

2005年05月31日 | 展覧会・展示会
   今、BUNKAMURA ザ・ミュージアムで開催されている「ベルギー象徴派展」については、迂闊にも十分な準備なく出かけた。
   モローやムンクと同じ派の芸術だと聞いていたので、ある程度のイメージを抱いていたが、なるほどと思った。
   モローの「サロメ」やムンクの「叫び」を見ていたので、なんとも言えない微妙な色彩を帯びた、あの世紀末の退廃的で官能的な狂気じみた印象を持っていたが、正にその通りであった。

   入場早々、ゴヤの、壁面に殴り書きの様に叩き付けた暗い時代の絵の様に鬼気せまるフェリシアン・ロップスの「魔性の女」や「悪魔のような女たち」が出迎えてくれるが、これが、不思議にもどこか官能的な雰囲気を醸し出しているのである。

   ボードレールの影響を受けているようだが、彼が評価した所為もあって、ワーグナー人気が高く、その肖像画や、パルジファル、「さまよえるオランダ人」のゼンタ等の絵があった。
   ワーグナー人気は、フランス語圏の方が高かったようで、バイロイトが巡礼地であったと言う。ワーグナー、引きずり込まれたら逃げられない。
   ワーグナーを崇拝し、ノイ・シュバイン・シュタイン城を建てたルートウィッヒ2世が、城内に作ったワーグナーの楽劇の舞台を模した装飾過多の部屋べやを、何故だか思い出した。

   ポスターに使われているフェルナン・クノップフの「妖精の女王」の2枚の絵、裸体のアクレイジアと甲冑姿のブリトマートは実に官能的で優美である。それに、ブロンズ彫刻の「メデューサの首」の何と言う迫力。
   ジャン・デルヴィルの「死せるオルフェウス」と「栄華を司る天使」も色彩豊かで優雅な美しい絵であった。

   この展示会、決して美しい芸術作品を鑑賞すると言っただけの感じではなく、一種異様な雰囲気であるが、会場を歩きながら、ベルリオーズの「幻想交響曲」を聴いているような気がした。
   悪魔の咆哮の中で、急に、えも言えない美しいメロディーが突然現れて、また、瞬時にかき消されてしまう、あれである。

   何か、久しぶりに、神秘的な不思議な世界を見てしまった、そんな印象を残して部屋を出た。
   地上に出ると梅雨のような雨が降っていた。
   
コメント (1)
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