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S&PのGMとフォードの格付けダウンについて、Lehman BrosのJack Malveyは、「コーポレート・アメリカにとって、ブルーチップ会社が、投資格付けの水面下に没した悲しい日。」と言い、The Economistは、「ジャンクの二つの塊り?」の記事の中で、「最早、倒産はありそうに無いとは言えなくなった。」と書いている。
20世紀の工業化産業社会を切り開いたフォードのT型車によるオートメーション大量生産方式も、「GMにとって良いことは、アメリカにとって良いことだ。」と豪語した世界最大のグローバル企業であったGMも、正に巨大な資本主義経済の象徴であったが、もはや、過去の物語になったのであろうか。
野口悠紀雄教授が、デトロイト訪問で、GM本社やその佇まいを見て、もうここには明日は無いと感じたと述懐されているが、その凋落ぶりは、外観だけでも分かると言うことであろうか。
BusinessWeekのS&Pの格付けレポートを読んだが、多少の差はあるが両社とも殆ど共通しており、結論は、「将来予想は、弱含み(Negative)。財務状況は、不安定で予測不可能。北米市場でのマーケット・シェア下落、将来の新製品の魅力のなさ、労働争議、及び/または、一般経済状況の悪化が、最終的に、格付けを危うくしている。」と言うことである。
冒頭に、利益に貢献していた多目的スポーツ車(SUV)の販売下落と利益圧迫に言及している。要は、経済社会の急激な変化と移り行く顧客のニーズを読みきれず、魅力的な新製品を開発して提供できなかったこと、即ち、イノベーションを忘れて経営革新を怠った過去の遺物的な経営の問題であろう。
(iPodに先を越されたSonyと同じ、革新的な最高のものを最も早く提供するイノベーターとしての人気消失)
ブランド・イメージの凋落が、更に拍車を駆けて、北米市場でのマーケット・シェアの下落を招き、工場閉鎖、レイオフ等コスト削減で経営悪化を乗り切ろうとするが、ヨーロッパ事業の赤字、寛大な健康保険給付やUAWとの労働争議等の問題(フォードの方は、過去債務等厚生労働コスト過重)もあり、自動車事業の方は、ブレイク・イーブン、収支トントンであろう。
収益の方は、自動車金融のGMACやFord Creditで生み出しているが、これも格付けダウンや金利上昇で悪化するであろう。
The Economistは、両社とも、当面は十分なキャッシュを保有しており、格付けダウンが、近い将来の経営を圧迫するとは思えないが、今後、本業でどれだけ収益を生み出し、過去債務等のコストがどれだけ増えて行くのか、どこまで生きてゆけるのかが問題であると論評している。
アメリカで20世紀前半に大企業で、今日生き残っている企業は極めて少ない。
GEは、ジャック・ウエルチによって生き返ったが金融会社に変わってしまった。IBMは再生した優良企業だが、IT関連では後塵を拝している。
時代を画したGMとフォードの経営悪化は、資本主義の一時代の終わりを象徴している。アメリカ資本主義は、主役が入れ替わりながら、ダイナミックに前進し続けている。色の変わったスローンJrの「GMとともに」を撫ぜながら感無量である。