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前回は英メディアを扱ったので、今回は米メディア、まず、Washington Post ,次に、New York Timesの報道について考えてみたい。
靖国神社問題から入るが、「靖国神社は、日本の軍国主義、帝国主義の象徴だと、アジアの人々は考えている」と言うのが、大方の米英メディアの考え方である。
靖国神社の博物館(遊就館の模様)の正面広間のゼロ戦、昭和天皇の軍服展示や、映画で、「パールハーバーをbattle for Japan's survivalとしていること、「兵隊達はお国の為に戦った。悪いことをしたと云えるか。」と云ったナレーションに触れながら、靖国神社を紹介している。
靖国を平和の象徴、第2次世界大戦を大東亜戦争、中国侵略を中華事変などとしていることなどに、違和感を感じながら、
「靖国神社を、英霊を祭る為の場所として確信を持って使えるように、戦犯の名前を取り除こうとする試みがあったが、神社の首脳が、神道では、一度祭られた英霊を移すことは宗教上許されないのだとして反対した」として、日本にも、靖国を問題視する動きがあることに言及している。
朝日の世論調査を引用して、多くの日本人(38%から48%に増加)や外国人が、小泉首相の靖国参拝に反対している、就任後、毎年参拝しているが、今年はまだ行っていない、としており、正面きって靖国問題については、論評を控えている。
一方、「中国と韓国・北朝鮮は、反日プロパガンダを、国内の国粋的な炎を煽り、国家首脳への憤激を逸らす手段として使っているのには疑問の余地は無い。」としながら、
日本の軍国主義的な傾向の高まりに警告を発している。
中国の軍事力強化や北朝鮮の核開発の前に、日本は、国連常任理事国入りの画策や軍事力保持の憲法改正を含めて、世界の政治舞台での役割強化や近隣諸国との島嶼の領有権など国家主権の主張の強化を始めたとし、
過去の歴史的な軍事的成功に関する出版物の増加、石原知事の韓国人の韓国植民地容認論等を例証しながら、ナショナリズムの高揚について述べている。
経済力の台頭、軍事力の強化、地政学的影響力の進展等中国の大国化への脅威が、そして一方、日本の政治的、軍事的パワーの強化・台頭が、両国のお互いの恐怖になっており、両国関係が将来危険な状態になると、軍事的紛争もあり得るとのコメントを引用している。
何れにしろ、日中紛争が、日本の戦後世界舞台への復帰、中国の世界舞台への登場を開いた非同盟国会議の第50回記念日となるアジアーアフリカ会議に暗雲を投げかけてしまった、と言う。
さて、一方のNew York Times であるが、重複を避けると概略次のとおりである。
小泉首相のスピーチについては、世界のリーダーの面前で行った所に意義があるが、これまでの日本の首脳のお詫びの内容から一歩も出ていない。これまでこの種の戦争のお詫びについては、日本のリップサービスだとして糾弾してきたが、今回も疑いの気持ちで聞いた。
同じ日に、A級戦犯を祭る靖国神社の春の大祭に多くの国会議員が参列したことにより疑惑が深まってしまった。
小泉首相の靖国参拝は、岐路に立っている。日中関係が最悪のこの時期に、参拝すれば中国の憤激を招くであろうし、参拝しなければ自民党支持の保守派や国民の怒りを買う。
日本は、何度も謝っているが、靖国参拝や日本の侵略や大陸支配を軽く扱う教科書問題が、日本の誠実性を疑わせ続けている。
日本は、国際的威信高揚の為に、国連常任理事国入りを目指しているが、今回の中国との紛争が、触れられたくない過去の歴史問題にスポットライトを当ててしまった。韓国、ヴェトナム、マレーシア、インドネシア等アジア諸国でのプロテストは、日本に対する危機的な批判である。
以上、ニュアンスが違うが、アメリカの論評は、イギリスのそれより、一寸辛口である。
しかし、示唆している問題点の重要さを認識していないと大変なことになる。
新鮮味の無いお詫びスピーチが、何を意味するのか。
アクションの進展なく、力の政治と外交だけが走り出すとどう言う事になるのか。etc.